ビッグデータ解析でわかった「研究力」と「科研費・交付金」の関係

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内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI、議長=菅義偉首相)は「論文成果には科学研究費助成事業(科研費)や運営費交付金の方が、近年急増した『その他の競争的資金』より効果的だ」と明らかにした。政策立案のエビデンス(根拠)を導く「e―CSTI」のビッグデータ(大量データ)解析で分かった。イノベーション創出や実用化に向けた競争的資金は、論文を指標とする研究力向上には貢献しないことを、再認識する必要がありそうだ。(編集委員・山本佳世子)

2021年度からの第6期科学技術・イノベーション基本計画の議論では「国費の選択と集中によらず研究力が低下している」との声が上がる。そこでCSTI事務局は研究力の指標とされる論文の質と量で分析した。

使ったのは国立大学、国立研究開発法人などの研究や資金獲得のデータを関連づけるウェブツールのe―CSTIだ。財源は18年度で使途が自由な運営費交付金など(学生納付金、病院収入も含む)約1600億円、科研費1000億円、その他の政府の競争的資金1900億円だ。

各研究者が何の財源を主とするか(50%以上か)で分類。交付金、科研費、その他競争的資金を主とする3グループに注目した。獲得研究費の平均は交付金グループで400万円弱、科研費グループが500万円ほどなのに対し、競争的資金グループは2800万円弱と差があった。

一方、論文数(エルゼビアのデータ)を研究者1人当たりでみると交付金グループは1本強、科研費グループは2・5本程度、競争的資金グループは4本弱。投入資金ほどの差は見られなかった。

次に論文数を研究費1000万円当たりでみると交付金グループは3本強、科研費は5本強なのに対し、競争的資金は1本強と少ないことがわかった。被引用数や、トップ10%・1%論文でも、競争的資金の論文数の少なさが顕著だった。

内閣府の担当者は「学生納付金など除いた純粋な交付金による論文創出の効率はさらに高くなる」と説明する。

公的資金の配分を議論する上で、指標を明確にして比較することが重視されそうだ。

日刊工業新聞2020年11月5日

COMMENT

山本佳世子
科学技術部
論説委員兼編集委員

研究力という言葉は実は漠然としている。「大学などの研究力が高ければ論文はたくさん出て、企業もそれに注目して、実用化に結びつくはず」と、すべてが上手く回るイメージは、単純すぎて誤りだというわけだ。議論の対象を明確に定義し(今回の場合は 研究力=論文の質と量)、そのエビデンスを持ってデータを分析することを、もっと意識する必要がある。e-CISTを使うとかなり多様なことが可能で、CSTI側はこれから続々と、注目案件を出してくるのではないか。

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