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頭を悩ます産学共同研究の経費、千葉大が企業に理解を得た仕組み

千葉大学は2021年度の外部資金収入を、18年度比2割増の約52億円とする。他大学に先駆けて実施した「産学共同研究における間接経費30%」で企業の理解を得たため、専門支援人材を倍増させて直接・間接経費の増加基調を定着させる。また教員が行う技術相談や研修でも間接経費を得る制度を新設する。増収分を学内の基礎研究などの支援に回し、次のイノベーション創出につなげる仕組みを確立する。

産学共同研究には研究に使う「直接経費」と、水光熱費や研究室器具など大学本部の手当分として直接経費の一定割合を払う「間接経費」がある。千葉大は企業に対し、共同研究時間分の教員人件費、設備の修繕費・減価償却費などの算定経費を説明。実際は44%になると示した。

その上で求める間接経費比率をそれまでの10%から30%へ変更。16年度の試行、17年度の本格実施を経てほぼ全例で適用できた上、直接経費も増加傾向とすることに成功した。

これを土台に産学官連携の部局を集約した「イノベーション・マネジメント・オフィス」(IMO)の設立を計画している。外部資金を増やして基礎、若手、人文・社会科学などの研究支援に回すのが目的だ。

産学共同研究プロジェクトの契約交渉や進捗(しんちょく)管理を手がける専門人材を、ここで25人に増強する。また教員の技術指導や講演なども、間接経費収入を設定した契約を導入する。同時にこれらが可能な教員・テーマをリスト化し、プロモーションすることも検討。使途限定でない寄付金を集めた「研究力強化基金」も新設する計画だ。


日刊工業新聞2019年12月5日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
千葉大の間接経費引き上げは以前から耳にしており今回、詳細を取材することができた。さらに関心を持ったのは、教員が行う技術相談や研修でも、間接経費を得る制度の検討だ。医学、工学にデザインや芸術系のスター教員では兼業のケースが少なくないが、大学の資源(オフィスや水光熱費、コピーなど)を使った活動となれば確かに、間接経費の対象だろう。これらの教員は大学にとっても大事なタレントだろうから、「取り立てで人材流出となった」と泣きの涙にならないよう、組織も個人も納得する仕組み構築が、必要になるのかもしれない。

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