人材の転換点…NECが中途採用を100人増やす狙い
NECは、高度な専門性を持つ人材獲得を加速するため、2020年度の中途採用を前年度比100人増の400人に拡大する。21年度の新卒採用計画は500人(前年度と同数)。この新卒を含めた通年ベースでは、20年度の中途採用が全体の5割近く(約45%)にのぼる見込み。通期の採用で、新卒と中途の採用が半々に近づく流れは自動車業界でもみられる。役割に応じて報酬が決まるジョブ型採用の拡大も含め、日本の大手企業の人材採用は転換点に立つ。
NECの中途採用は17年度までは欠員補充が主体で、通期は80人強だった。18年度からは3カ年の中期経営計画に沿って、全社の「カルチャー変革」を推進。人事や採用方針も見直し、中途採用は欠員補充ではなく、「異なるDNA(遺伝子)を持ち込み、新しいイノベーションを生み出す」方向にかじを切った。以降、中途採用は18年度に100人を突破、19年度は300人に拡大した。ユーザー企業やコンサルティング業界からの採用に加えて、本社スタッフ業務では外資系の出身者も多く、全体として女性比率が増えたという。
加えて、新卒採用でも新たな仕組みとして「新卒ジョブ型採用」を導入する。専門性を重視した「キャリア採用」の枠を学生にも拡大し、優秀な人材に対しては、本人が担う役割に応じた報酬水準で処遇する。まずは数人程度を見込む。
同業の富士通は21年度採用計画では新卒750人、中途採用300人。中途採用は19年度の150人から倍増する。このほか、新設のデジタル変革(DX)の新会社では、コンサルタントなどの外部経験者を一気に“3ケタ規模”で採用する。NECと同様に、カルチャー変革が喫緊の課題となっている。
インタビュー/佐藤千佳 NECシニアエグゼクティブ カルチャー変革本部長兼人材組織開発部長
18年に日本マイクロソフト(MS)からNECに転身し、カルチャー変革を指揮する佐藤千佳シニアエグゼクティブ カルチャー変革本部長兼人材組織開発部長に取り組みを聞いた。(聞き手=編集委員・斉藤実)
―前職での経験はNECのカルチャー変革にどう生かされていますか。
「日本MSには5年間、その前は日本GEに15年間在籍していた。MS時代はサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)が全社変革に着手したころだった。当時、MSは変わらなければ生き残れないという危機感が強く、そこからすべてが始まった。日本法人もグローバルと同時進行で転換を遂げ、それを人事のトップとしてみていた。NECはグローバルで勝つことが目標であり、その意識付けに力を注いでいる」
―NECに入社した18年以降を振り返ると。
「19年から人材開発も担当し、人事の一部も担っている。NECは長い歴史に培われた典型的な日本企業。DNAは簡単には変わらないが、社員アンケートをみると、点としての改革が面として広がっていく期待は高まっている」
―NECは今年が創業121年ですね。
「脈々とした歴史があり、改革の成果が見られても1、2年でゴムが戻るように、先祖返りとなってしまう。時間がかかっても小さくでもよいから、いくつかの変化や成功を積み上げていかないと、人の気持ちは保たない。絶対に手を止めてはならない」