いよいよか、国立大学によるVBへの出資解禁へ
国立大学の出資が可能な企業の範囲が、2022年度からの第4期中期目標期間に大幅に広がりそうだ。国立大の経営強化を議論する文部科学省の会議では、入試や就職活動支援の業務子会社だけでなく、技術系の大学発ベンチャー(VB)への出資の解禁が俎上(そじょう)に上がる。実現すれば中小規模大学でも、強い分野のVBを集中支援して、上場利益を手にする夢が描ける。04年度の法人化時から続く懸案事項だけに、注目を集めそうだ。(取材=編集委員・山本佳世子)
議論するのは「国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議」だ。国立大の出資対象事業は現在(1)技術移転機関(TLO)(2)ベンチャーキャピタル(VC)(3)指定国立大学法人に限った、研修やコンサルティングの大学発VB―の3形態だ。これに共同・受託研究企業を加える流れができている。
さらに同会議の中間とりまとめで「国立大の教育研究に関するノウハウを生かせる事業など」も検討すべきだとした。具体例は記されていないが、「技術系VBも規制緩和の候補で、内閣法制局と話をしている」(文科省・高等教育局国立大学法人支援課)という。
大学の研究成果で生まれた大学発VBへの出資は、株式上場利益のリターンと投資損のリスクを併せ持つ、ハイリスク・ハイリターン案件だ。国立大にふさわしくないと禁止され、子会社のVC経由の出資に限定されていた。しかしイノベーション推進の大学発VBの上場が増え、環境は変わってきた。
指定国立大のみという制限も考えられるが「全国立大で選択肢を広げておいて、出資案件の認可を慎重にする」(同)ことでリスク対策できるとみる。VC設立の資金は集められない中小規模大学でもVB1社への出資なら資金を確保できる。
同会議では目標管理や評価、学長選考会議、学生定員の扱い柔軟化など、さまざまな項目を取り上げている。VB出資は意見が多様なこともあり、年内の最終まとめを待つことになりそうだ。
