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東工大、JR山手線駅前に破格のランドマーク

東工大、JR山手線駅前に破格のランドマーク

32階建てビルなどを建設(田町キャンパス)

東京工業大学は田町キャンパス(東京都港区)の再開発で、土地活用の事業予定者の募集を始めた。民間資金を活用した社会資本整備(PFI)により、山手線の田町駅前に建設する複合ビルで、両者の連携で整備・運営する産学官連携機能が要件だ。国内外の企業や大学、ベンチャーなどが集まる共創型コミュニティーを構築し、オープンイノベーション創出につなげる。

東工大が土地を所有したまま、定期借地権を事業者と大学で準共有し、大学施設と民間施設の複合ビルを建設する。貸付期間は2025年から75年間。事務所を主に商業施設も入る。産学連携機能は、1万平方メートル超の都心型大型コミュニティー・ワーキング・スペース、インキュベーション施設、新技術の情報発信スペースを想定している。

これに向けて現在、同地にある東工大付属科学技術高校は大岡山キャンパス(同目黒区)に移転。また田町で通りを挟んで所有する職員宿舎跡地にも、小規模な複合施設を建てる。

日刊工業新聞2019年12月12日

年10億円の事業収入見込む

出典:日刊工業新聞2018年4月24日

東京工業大学は2027年完成予定で、田町キャンパス(東京都港区)に民間と連携して事務所・商業の複合ビルを建設する再開発に着手した。JR山手線・田町駅周辺の一等地に、32階建てビルなど延べ床面積18万平方メートルの施設を建設する。年10億円の事業収入を見込む。東工大は3月に「指定国立大学法人」となり、年23億円の新財源創出を計画しており、同事業はその核と位置付けている。

田町キャンパスには現在、技術経営の専門職大学院などで活用するキャンパス・イノベーション・センター(CIC)や付属高校がある。田町駅東口の再開発や田町―品川間の新駅構想で注目の高い地域だ。現在のキャンパスは延べ2万2000平方メートルの規模だが、容積率が東口再開発と同様に引き上がるため高層施設の建設が可能。港区の産業振興と大学経営の両面からキャンパスの再開発に取り組むため東工大の経営協議会の委員の1人に港区長が就任している。

資金の調達・回収は官民パートナーシップ(PPP)/民間資金を活用した社会資本整備(PFI)を活用する。建物の一部は都市部に適した東工大の研究活動に使う。現在、コンサルタントと検討を始めた段階で、行政協議により規模を確定した上で設計に入る。着工時期は未定だが実施方針の公表は19年3月、事業契約は20年1月の予定だ。

指定国立大学は研究・教育など世界一流大学と競う大学を指定する17年度開始の制度で、財政基盤の強化を重要な要件としている。東工大は同時期に可能になった寄付金の資産運用、田町での事業、産学連携などで30年に年23億円を確保する計画だ。国立大の不動産活用の規制緩和も17年度になされており、公的資金に依存しない国立大学改革が加速しそうだ。

山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
大学の土地に建物をPFIで建てるケースは、国立大学でも時々、みられる。が、32階建てクラスのビルを、山手線田町駅すぐの場所で建てるという東工大のケースは、他に見られないものだ。これによる大学の年間収入は10億円との試算もしているが、建設にはいったいいくらの民間資金が動くのか。国立大の通常の感覚を越えていることは確かだ。産学官連携に供することもあり、完成の暁には破格のランドマークとなるだろう。

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