アジアの有力ベンチャーが火花。優勝はタイ、日本は…
アジアを中心とする技術系スタートアップが社会課題の解決につながるビジネスアイデアを競う「アジア・アントレプレナーシップ・アワード2020」(AEA2020)が開催され、食品を劣化から守る透明可食フィルムを開発するタイの「Eden Agritech (イーデン・アグリテック)」が優勝した。9回目の今回は初の全編オンライン開催となり、ヘルスケアやコミュニケーション、働き方、QOL(クオリティー・オブ・ライフ)に関わるサービスを持つスタートアップ30社が12の国・地域から参加した。
共催者である三井不動産の北原義一副社長は「(新型コロナウイルスの感染が拡大する中で)AEA2020は開催すべき否かの議論があったが、開催してよかった。参加企業のプレゼンテーションに元気や勇気をもらった。その意味で今大会は全員がグランプリだ」と力を込めた。
AEA2020は10月27日-29日の3日間で行われた。参加企業はメンターからのアドバイスを受けた後、28日のセミファイナルでプレゼンテーションを披露し、中国、インド、日本、マレーシア、シンガポール、タイの企業計6社が29日の最終審査に駒を進めた。事業の革新性や社会的影響力、日本企業との連携の可能性などの観点で審査が行われた。
優勝したイーデン・アグリテックの透明な可食フィルムは、野菜や果物に塗布することで輸出する際に鮮度を保てるほか、薬品を使う場合に比べて人の健康によいという。審査員からは食品の廃棄を抑制できるコンセプトなどが評価された。
準優勝はマレーシアの「Nitium Technology(ニチエム・テクノロジー)」。新材料・低コスト製造技術による多孔性ニッケルチタン製歯科インプラントを開発している。同社は特別賞の「オーディエンス賞」も受賞した。3位は中国の「Onesight Technology(ワンサイト・テクノロジー)」。AR・BIM・IoTを用いた建物のライフサイクルマネジメントソリューションを展開している。
日本企業として唯一のファイナリストとなった「Mantra(マントラ)」は特別賞の「日本ベンチャー学会賞」と「IPブリッジ賞」を受賞した。マントラは高精度な機械翻訳エンジンを備えた漫画翻訳ツールを開発しており、漫画を輸出する際の翻訳コストを大幅に引き下げられるという。審査委員からは事業の将来性などが評価された。