空き家を民宿に!?アイディアが町を生き返らせる!
空き家を宿泊施設に改修
【“富の循環”起点】
石川県加賀市の山中地区に9月初旬、日本風の塀に囲まれたカフェがオープンした。建物2階のバルコニーではカップを持ってくつろげる。もともとは空き家だった。地域ビジネスを支援する、まち未来製作所(横浜市中区)が企画し、鉄筋コンクリート造りでありながら蔵もある「和洋折衷」の趣を残して改修した。
山中地区は加賀の老舗温泉街だが、空き家が増えている。放置すると景観を損ね、観光地として魅力が低下しかねない。地域課題となっていた空き家の解決策をまち未来製作所が提案した。
建物の改修だけでは終わらなかった。塀の一部を取り壊し、隣接する公園からも出入りできるようした。温泉街に人の流れを生み出す工夫だ。また、カフェの料理には地元食材を多く採用した。メニューは和食職人に考案してもらったが、地元の人も調理できるレシピとなっている。まち未来製作所の青山英明社長は「地元食材の使用や住民の雇用により、地域内で資金を循環させる」と狙いを語る。
「LOBBY」と名付けたカフェは多い日だと40人が県外から訪れる。地域で10人の雇用を生んだ。大きな経済効果ではないが、“マイナスの価値”だった空き家を富の循環の起点にした。
【地域に経済価値】
温泉街で働く芸者の住居も、宿泊施設「ゲイコハウス」に改修した。ただし食堂も入浴設備もない。宿泊客には食事は近所の居酒屋やレストラン、入浴も地元の浴場を利用してもらう。「宿から街へ出てもらうことで、地元の人の生活を体験できる」(青山社長)という。新しい宿泊施設は周囲と競争せず、地域に経済価値をもたらす存在だ。
宿泊施設と地域の日常を連携させ、地域価値を向上させる手法は「まちやど」と呼ばれる。まち未来製作所は各地の空き家問題の解決策として「まちやど」を提案する。家主も宿泊施設にすることで空き家の所有にかかわる費用負担が減り、地域にも貢献できる。
【新電力に着目】
空き家解決の支援事業は加賀市で緒に就いたばかりだが、青山社長は推進力として各地の地域新電力に着目する。電力販売の利益の一部を空き家の改修費用に回せば、地域資金の“循環力”が増す。
青山社長は11年の東日本大震災後、上場企業を退社して地域新電力の立ち上げに携わってきた。まち未来製作所は16年に起業。電力と空き家に接点を見いだせたことで「当社が地域の自立の一端を担える」と展望を語る。