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長崎・小浜(おばま)の温泉発電事業がスタート

湯の花発生を抑制しメンテナンスを効率化
長崎・小浜(おばま)の温泉発電事業がスタート

小浜温泉の蒸し釜(本文とは関係ありません)

 洸陽電機(神戸市東灘区、乾正博社長、078・851・8819)は、長崎県雲仙市の「小浜温泉バイナリー発電所」で売電事業を始めた。自然エネルギー事業の拡大の一環。環境省の実証事業が終了した発電所を買い取って行う。年間で売電量は一般家庭220世帯分に当たる79万2000キロワット時、売電額は3168万円を見込んでいる。

 温泉バイナリー発電は、温泉の成分により湯の花が発生しパイプに付着して詰まりの原因となることが課題だった。同社は湯の花が発生しやすい環境を研究。温泉をタンクに移さず、直接熱交換器に流すことで湯の花の発生を抑制した。また発電の効率化にも取り組み、事業化につなげた。乾社長は「事業化は簡単ではなかったが、地元のシンボルとして継続して運転していきたい」としている。

 同発電所は2013年度までの3年間、環境省の温泉発電実証事業により調査や試験を実施。14年6月に洸陽電機が買い取った。今後は地域に根付いた発電所として見学ツアーなどが企画されている。


温泉発電生かし地域振興―小浜温泉エネルギー代表理事・本多宣章氏


日刊工業新聞2013年12月23日 オピニオン面「主張」


 小浜温泉は長崎県南部の島原半島にある歴史ある海辺の温泉地。湧出量は1日当たり約1万5000トン、源泉温度は約100度Cと熱量では日本有数の規模だ。2013年4月から環境省の委託事業として、未利用温泉水を使ったバイナリー発電を実証している。観光など地域振興も含めて、地域を挙げた事業化を目指している。

【捨てていた湯を活用】
 現在は三つの源泉から温泉水をパイプで引き込み、出力72キロワットの発電装置3機で発電している。公共の健康施設に送電し、消費電力の約半分をまかなっている。小浜では温泉水を20軒ほどの旅館・ホテルに加えて、民宿や個人宅で利用している。だが湧出量の約7割は未利用で捨てており活用法を模索してきた。古くは30年前、近年も00年代前半に地熱発電が検討された。だが掘削を伴うため枯渇を懸念する声が上がったほか、地元調整をできず中止になった経緯がある。

 今回の温泉水発電は07年に長崎大学が調査と地元への働きかけを開始。それを受けて11年3月に産学官で推進協議会を立ち上げた。同年5月に事業の受け皿となる運営組織として、一般社団法人の小浜温泉エネルギーを設立。11月に環境省事業が始まった。実施にまで至ったのは、掘削不要で未利用の湯をそのまま使うため。湯を何とかしたいという思いは地域で共有しており、反対もなくスムーズに進んだ。

 そこには観光客減少を背景にした地域振興の期待もある。小浜の観光客は90年代に比べ半減した。現時点で温泉発電が多くの宿泊客を集客するまでにはなっていない。だが施設稼働後、約半年間で1200人が視察。メディアで取り上げられた効果もあり、小浜の名前が広がった実感はある。観光協会と観光プログラムを作っており、長崎は修学旅行の来訪が多いことから、平和学習は長崎市で、環境学習は小浜でできるようにしたい。すでに兵庫県から訪れた実績もある。

 【分散型電源には課題も】
 ただ発電面では課題も挙がっている。スケールと呼ぶ湯あかだ。熱交換器や配管、タンクの内部に石のように固着する。発電効率に影響するためメンテナンスが欠かせないが、人手で行う必要があり手間がかかる。昔は「湯の花」として販売していたが、有効な解決策はまだない。

 環境省事業としては14年3月まで実施する。その後も発電を続け、将来は分散型電源としての事業化を描く。30ある各源泉でオンサイト発電できれば理想的だ。発電利用後の温泉水の二次利用も検討する。温室や養殖での利用が考えられるが、平地が少なく難しい部分もある。そのため若い人々の知恵や知識が必要だ。移住してきた若者が増えている。“よそ者”の力も借り、地域が一体化して振興につなげたい。 
 【略歴】
ほんだ・のりあき 江戸時代から泉源を受け継いできた、「湯太夫(ゆだゆう)」の家系の12代目。地元の意思を代表する形で11年から現職。長崎県出身、73歳。(年齢は掲載時)
日刊工業新聞2015年09月30日 中小企業・地域経済2面
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
環境省の実証期間中に取材したことがありますが、熱交換器などに付着する岩のように固いスケール(湯の花)に苦戦していました。その課題を解決したとのことですが、詳しい仕組みが気になります。 長崎では雲仙温泉や島原温泉が有名ですが、小浜温泉もなかなか良いです。観光協会の前には「オバマ」もいます。

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