強靱な「空飛ぶクルマ」を生み出す、部材メーカーの技術力

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高層ビル群の上空を空飛ぶクルマが飛び交う(イメージ=経産省提供)

空飛ぶクルマの実現に最重要となるのが、安全性の担保だ。静止した状態から垂直に浮き上がるなど、従来の移動体からは予測もできない耐衝撃性や耐久性、品質が要求される。一方、機体は既存の航空機と比べはるかに小型で、軽量性も欠かせない要件となる。日本の部材メーカーはこれまでも、相反するニーズを技術で解決してきた。培ってきた技術力をフル活用し、グローバルで戦える土台は十分にある。

「既存の航空機用シートよりも乗員負荷を軽減できる可能性も出てきた」。ミズノの金子靖仙グローバル研究開発部技監は、手応えを示す。同社はSkyDrive(スカイドライブ、東京都新宿区)や、シートベルトなどの自動車用安全部品を手がけるジョイソン・セイフティ・システムズ・ジャパン(東京都品川区)と共同で、空飛ぶクルマ向けに衝撃緩衝装置内蔵の乗員用座席の開発を進めている。

シューズのソール部分に用いる、クッション性と安定性を兼ね備えた独自の波形プレート「ミズノウエーブ」の技術を応用。素材ではなくウエーブプレートの形状を調整することで衝撃吸収性能を制御できる。材料ごとの衝撃吸収シミュレーションや、一から装置を作っての衝突実験を行う過程を省略できるため、開発期間の短縮につなげられる。

ミズノウエーブ単体でクッション性と安定性があり、一般的な衝撃緩衝装置に比べて軽量化が図りやすい特徴もある。

強靱な機体

機体面でも軽量化と強靱(きょうじん)化を両立できる素材の採用が進む。東レは独リリウム(ミュンヘン市)と、空飛ぶクルマ向け炭素繊維複合材料の供給契約を締結した。リリウムが開発する空飛ぶクルマ「リリウムジェット」の胴体、主翼、動翼などに、東レの炭素繊維複合材料を採用する。2025年の商業運航開始を見込む。

航空機用ジェットエンジン部品をメーンに手がける吉増製作所(東京都あきる野市)は、既存の知見を生かす。8月に東大発スタートアップで空飛ぶクルマを開発する、テトラ・アビエーション(東京都文京区)に出資。吉増弾司社長は「(次期試作機の)設計開発段階から関わっていきたい」と意気込む。機体の部品製造に関して、規定や要求事項は今後決まっていくと見られるが「現在の航空機分野に近い部分が出てくる。長年の知見が生かせる」(吉増社長)と自信を見せる。

大きな商機

空飛ぶクルマが生み出す巨大市場は、裾野産業にも大きな可能性を広げる。部材メーカーだけでなく管制制御システムを狙うNECや、離着陸場の整備を目指すENEOSイノベーションパートナーズ(東京都千代田区)のように、インフラ面のサプライヤーも商機を逃すまいと続々と参入している。

現在は各国・地域が標準規格も見据え制度設計に着手している段階だが、乗り遅れれば新市場への期待は絵に描いた餅になる。「実現するには官民どちらも前のめりでないと進まない」(スカイドライブの福沢知浩社長)。スタートラインに立った今、実行力とスピード感が求められる。

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