女性活躍は当たり前!タムロンが築いた育休の「日常茶飯事」化
タムロンは長い年月をかけて従業員の働き方を変えながら女性が活躍できる環境をつくってきた。出産・育児休業の制度面はもちろん、企業内保育園を開園するなど環境を整備したところ、離職率は製造業の中でも低く推移している。労働力人口が減少する中で女性活躍が叫ばれるようになったが、コロナ禍にある今こそ、その真価が問われている。
「その計画は途中で頓挫しました」。タムロンで管理本部長を務める加藤昌和執行役員は女性管理職の育成プログラムを導入しようと奔走した際、女性の社外取締役にその可否を指摘され、計画を断念したことがあると苦笑する。
1986年に男女雇用機会均等法が施行されたころから、同社は係長職を手始めに女性管理職の育成を積極的に進めてきた。このため女性の従業員や管理職の活躍は当たり前という企業風土・文化が醸成されている。
例えば人事部。同部に属する上遠野悠子課長の下には自分も含め10人中9人が女性。しかも上遠野課長は育児との両立を図り、定時より1時間早く帰宅する。上遠野課長は「残業が前提ではない。課員の皆さんが理解している」と説く。業務効率化を心がけていることは言うまでもない。
「保育園が入社の要因(動機付け)になっています」。同社は2015年11月、本社敷地内に保育施設を開園した。女性従業員が育児休業から復帰した際に、勤務が難しいケースがあると考え、トップダウンで開園が決まった。16年4月には認可保育園として地域の住民にも開放した。
育児が仕事を続ける上での負担にならないように「出生が分かると、人事部が育児休業などの各種制度を積極的に説明する」(加藤執行役員)。女性に限らず男性従業員も有休で5日間、それ以上は無休で育児休業が取得できる。
各種制度は経営層の視点でみると、人材の離職を防ぐ環境整備の一環だが、現場の従業員からすれば欠員が生じた分、自らの負担増になりかねない。しかし同社は「半年後に戻ることが分かっている。もはや日常茶飯事」(経営企画室の青木隆幸氏)と意に介さない。「長い時間をかけて基礎を作ってきた」(斎藤久美子企業広報課長)と自信を示す。
「雇用のミスマッチはありません」。加藤執行役員がこう話すように、離職率は1・5%と低い。制度が整っているほか、光学設計など職種を決めて採用することも離職率の低下に影響する。女性技術者も多く、応募者の3―4割を占める。営業部門では在職者の3割が女性という。
女性従業員は高いコミュニケーション能力と、きめ細かい対応が客先でも評価されやすいと言われる。それだけにコロナ禍で営業など苦戦を強いられている今こそ、女性従業員の真価が問われている。今後、厳しい状況があっても「女性には女性が話すと、本心が聞けることもある」(加藤執行役員)と、その対応力に期待する。