代理店数は約1700店! みずほ信託が地域金融機関と連携を深める理由
年度内20機関見通し、代理店約1700店体制
みずほ信託銀行は、信託商品の販売で地域金融機関との連携を深めている。今夏だけでも千葉興業銀行、トマト銀行、浜松いわた信用金庫などと矢継ぎ早に代理店契約を結んだ。年度内には連携先が20機関に達する見通しだ。一連の取り組みで地域金融機関が営業網に加わる。同行の自前店舗は約60店だが、約1750店体制に広がった。地域金融機関は顧客との関係を深め、都市部への顧客や資金流出などを抑え営業基盤を維持する狙いがある。
4月にみずほ信託銀行の代理店となった栃木銀行。本年度始動の中期系計画では、資産承継支援を重点施策のひとつに盛り込んだ。みずほ信託銀と連携した地域金融機関は、2016年の取り組み開始から20年10月までに18機関。19年は2機関にとどまったが、今年はすでに6社と契約をまとめた。
地域金融機関が信託事業に積極的なのは利ざやの事業モデルの低迷のほか、高齢化社会で資産承継ニーズが高まっていることにある。信託協会の調べによると、例えば資産の承継者をあらかじめ指定しておく遺言代用信託は、19年度末の累計受託件数が18万件で、15年度末から約4割増えた。「引き続きニーズはあるだろう」(信託協会)と継続的な増加を見通す。
資産を引き継ぐ予定の人が大都市に定住し、地域金融機関に口座を持たないケースが増えていることも大きい。地盤沈下を招き兼ねない事態だ。営業基盤を確保するためにも信託商品の提供は有効だとみる向きがある。
ところが、信託商品の販売は取り扱い経験のない行員にとってハードルが高い。商品や法制度知識に加え、顧客の資産をすべて公開してもらうなど、「お客さまに本音で話してもらう特別なノウハウが求められる」(同行)。9月に販売を始めた相続手続きの商品「WEB遺産整理」など商品によっては、親族が亡くなった際に提案するものもある。
みずほ信託銀は、こうした虎の子ともいえる営業ノウハウや、タブレット端末で容易に資産承継をシミュレーションできる販売支援アプリなどを提供し、販売のハードルを継続的に下げる考えだ。同時に1月に取り扱いを始めた事業承継信託を一例に委託する商品を拡充していく。「商品、アプリなどインフラ、ノウハウの提供で連携強化を進める」(同)方針だ。
一連の取り組みは、同行と地域金融機関のウイン―ウインが成立しそうだ。ただ、連携先の販売状況は濃淡がはっきりしている。各行の戦略上のことであれば販売が低調な提携先の底上げは難しいが、連携に改良と成長の余地があるとも考えられる。