プロバスケチーム・レバンガ北海道が「即時映像分析」で得た二つのメリット

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映像分析ツール「FL―UX」を使ったミーティング(レバンガ北海道提供)

プロバスケットボールチームのレバンガ北海道(札幌市厚別区)が、スポーツ映像のリアルタイム分析を活用したチーム強化を進めている。試合中に好プレーや反省シーンをその場で編集して選手にフィードバックする。スポーツ分析ベンチャーRUN.EDGE(ラン・エッジ、東京都渋谷区)の技術を導入した。競技力強化とメディア戦略。限られた資産をフル活用する試みが始まっている。(取材=小寺貴之)

【スピード感】

「練習中や試合中に映像を集め、すぐに選手にフィードバックする。分析結果をリアルタイムにチームで共有できる。この効果は大きい」と宮永雄太ヘッドコーチ(HC)は自信みせる。レバンガ北海道はラン・エッジの分析ツール「FL―UX」を導入した。試合の様子を撮りながら宮永HCが、いいプレーや悪いプレーをタグ付けしていく。そのタグで映像を編集し、前半戦の分析ハイライトを作成する。ハーフタイムの短い時間に相手の隙や自分たちの戦術を確認できる。

従来は映像編集に一晩かかっていた。試合中のフィードバックは難しく、練習では翌日に昨日の練習内容を振り返る。そして自分のチームと相手チーム、攻めと守りを分担して四人で分析タグを付ける必要があった。この作業が一人になった。バスケは流動的な競技だ。球速や走る速さのように自動計測できる数値よりも連携の良し悪しが問われる。連携のタイミングや配置など、コーチや選手でないと解釈できない要素が多い。宮永HCは「人が判断する部分を即時反映できる。このスピード感は他にない」と説明する。

【コンテンツ化】

この分析映像は会員制交流サイト(SNS)への配信とも相性が良い。試合中にかっこいいシーンをタグ付けすれば特定選手のハイライトを作成できる。練習中のおちゃめな姿やNG集も撮り集められる。これはチームとファンを結ぶ新しいコンテンツになりうる。

横田陽最高経営責任者(CEO)は「分析映像はコートを俯瞰(ふかん)で撮影する。スタッフだけが入れるゴール下の映像の方が迫力がある」と指摘する。分析用と配信用の映像は必ずしも同じ画角ではない。だが限られたリソースを選手向けとファン向け、両方に展開できるのが映像の利点だ。プレーの良し悪しや解説をリアルタイムにファンと共有すれば、宮永HCは「(ファンも)試合中の変化や成長をリアルタイムに感じられるようになる」と期待する。

スポーツチームにとって、それを支えるコアファンの存在は大きい。コアファンが友人を誘って試合会場に連れてきてくれるためだ。コロナ禍でスポーツ観戦は難しい状況にあるが、リアルタイムな編集映像は、この課題を超える武器になる可能性がある。ファンとチームが一体になれたとき、より深い関係が紡がれる。

日刊工業新聞2020年10月6日

COMMENT

小寺貴之
編集局中小企業部
記者

どんなスポーツもお金のあるチームはごく一部で、大半のチームは限られた資金と人で運営しています。映像は競技向上と動画配信の両方に展開可能です。スポーツの試合中に現場で手軽に編集し、分析し、メッセージを載せられると可能性が広がります。カメラやスマホなど、端末はあるのです。あとはUIと自動編集、自動集計です。スポーツシーンの解釈の自動化はまだまだ難しいです。スポーツ評論家ですら苦労していることは人間にやらせて、現場とファンをつなぐことに注力するのも有効だと思います。

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