うそ発見器の技術が進展!音声データで感情を可視化、コールセンター従業員の離職防ぐ
怒り・喜び音声を数値化
音声から感情を解析する―。CENTRIC(セントリック、東京都豊島区、山田亮社長、03・6912・5164)が提供する感情解析サービスは、音声周波数などを分析し、怒りや喜びなどの感情を数値として定量的に示す。コールセンター従業員の会話を解析し、感情の変化を読み取ることで離職防止に役立てる。メンタルヘルスケアを含めた多様な活用分野を模索している。
【電話応対改善】
セントリックはイスラエルのネメシスコが開発した音声解析エンジンを活用し、会話に含まれる感情を解析するソリューション(問題解決)型サービスを開発する。サービスの一つである「ESAS(イーサス)コールセンターサービス」は、顧客とコールセンター従業員の会話を分析し、怒りや喜びといった複数項目のスコアとして表示。電話応対の品質改善や、ストレスを感じる職員の離職防止などに活用できる。
セントリック感情解析研究室の久保田啓介氏によると、ネメシスコの感情解析エンジンはうそ発見器などの軍事技術として開発された。「言語の種類や言葉の意味に関係なく、音声データから感情を可視化できる」(久保田氏)のが利点。
音声の波長や周波数などをバイオマーカーとして利用し、複数の数式に当てはめて解析する。
感情解析サービスを手がける企業はあるが、他社に比べ「あらわにされない感情を可視化できる点に強みがある」と、子会社のESジャパン(東京都豊島区)EDP事業本部の杉野睦グループマネージャーは話す。他社サービスの中には会話表現を解析して感情を評価するものがあるが、セントリックのサービスは言語表現に現れない感情も声の周波数などから把握できる。
【熊本大と研究】
同社はコールセンターの運営やコンサルティングなどを手がける。2018年に感情解析の研究を本格的に開始。現在は熊本大学とコールセンター業務で得られる音声ビッグデータ(大量データ)を共同で解析している。
また、同社は「イーサス」というブランド名で複数の感情解析サービスを展開する。日経統合システム(東京都江東区)と共同で従業員のストレスチェックに活用できるサービスを開発した。セントリックの久保田氏は「メンタルヘルスケア領域ではこれまで、アンケートや面談といった評価方法が一般的だった」と指摘する。開発したサービスは業務の満足度やストレスレベルを数値化。従来型の評価法と組み合わせ、さらに客観的な評価が可能になる。「従業員の思考傾向を感情型や論理型に分析し、人事などの分野でも役立てられる」(久保田氏)と力を込める。
医師がビデオ通話で患者を診察するオンライン診療分野でも感情解析サービスを開発する。患者のストレスなどを調べる補助手段になるという。医師から分析対象の会話データを収集し、20年度以降の実用化を目指す。
新型コロナウイルス感染拡大で非接触のコミュニケーションサービスが普及する中、さらに感情解析の活用場面が広がりそうだ。