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柿渋で新型コロナを不活化!?感染力1万分の1に。奈良県立医科大が発表

奈良県立医科大学の伊藤利洋教授と矢野寿一教授、同大学MBT研究所、同大学と連携企業による団体MBTコンソーシアム(奈良県橿原市)は15日、高純度の柿渋を使い新型コロナウイルスの不活化に成功したと発表した。試験管内で柿渋中のタンニンが感染力を持つ同ウイルスを1万分の1以下に減らすと確かめた。今後、実用化に向けて共同研究企業を公募し、数カ月中にも食品で応用し世界での流通を目指す。

柿渋は食品として実績があり安全性が高いため、予防が期待できる食品として早期実用化を目指す。世界への供給を前提に、あめやチューインガムなど口の中で一定時間タンニンの濃度を保てる形状で展開する方針。

口腔(こうくう)内に近い条件での実験として、試験管内に唾液と新型コロナウイルスを入れ、高濃度に抽出した柿タンニンを加えた。軽く混ぜて10分間置くと、感染力を持つウイルスは1万分の1以下に減少した。

一方、数分の1に希釈したタンニンでは効果が低かったことから、一定以上の濃度が必要と判断した。不活化の仕組みは明らかではないが、インフルエンザウイルスなどと同様、ウイルスの細胞への侵入経路を事前にタンニンがふさぐと推測される。

同日の奈良医大での会見で、MBTコンソーシアムの理事長を務める同大学の細井裕司学長は「今、求められている研究成果で数年後の実用化では間に合わない。一刻も早く世界へ発信したい」と意気込みを述べた。

日刊工業新聞2020年9月16日

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