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コロナ禍からの技術革新、NEDOが発した二つのキーメッセージ

コロナ禍からの変革 NEDOの提言(1)
コロナ禍からの技術革新、NEDOが発した二つのキーメッセージ

NEDOはデジタル変革とレジリエントのキーメッセージを発した(写真はイメージ)

新エネルギー・産業技術総合開発機構技術戦略研究センター(NEDO―TSC)は、コロナ禍後の社会変化と期待されるイノベーション像をまとめた。コロナ禍の影響はサービス産業から製造業、エネルギー分野などと幅広い。5回連載で内容に迫る。初回は岸本喜久雄センター長に背景と狙いを聞く。

―コロナ禍は状況が刻々と変化します。いつから制作に入ったのでしょうか。
「4月に特別チームを立ち上げて4―5月で情報を集め、6月にリポートをまとめた。120人の識者のコメントを集めて基礎を作り、学術界や産業界、政策当局と意見交換しながら将来像をまとめている。現場を意識し、社会実装を見据えたリポートだと自負している。ここで描いたイノベーション像は政策当局と関係機関が一致団結して実現に向かうことを期待したい」

―具体的には。
「キーメッセージは二つ。デジタル変革(DX)とレジリエント(強靱(きょうじん)だ。デジタルシフトは、世界の誰もが重要性を認識するようになった。一部の識者や経営者の認識ではなく、教育も医療も製造業も幅広い分野でリモート化やオンライン化、自動化が求められるようになった」

「コロナ禍ではマスクや医療資源の供給不足だけでなく、電機や自動車などのサプライチェーンに影響が出た。国内でも古紙や古着などのリサイクル網が滞った。都市のあり方も、大都市一極集中から分散型の小規模都市が志向されている。すでにテレワークの普及で自宅での電力需要が急増し、電力需給のパターンが変化している。感染症や災害が発生しても、経済社会活動が停滞しないレジリエントな社会が求められている」

―民間はこのリポートをどう使えますか。
「新ビジネスを生み出すヒントにしてほしい。価値観と社会が変容し、次にどんなイノベーションが求められるか網羅した。だが、すべての課題に対して解決策がそろっているわけではない。言い換えると、そこにはコロナ禍の変化をリードするチャンスがある」(聞き手・小寺貴之)

日刊工業新聞2020年7月30日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
コロナ禍で研究開発の方向性も大きく動くことになります。既に走っている国の大型プロジェクトも、中間審査の時にコロナ禍視点でジャッジが変わることになりそうです。研究推進者としては辛いところですが、開発した技術の社会実装像が大きく変わってしまったことも事実です。DX関連は大変です。早く形にしないと本気になった企業が事業を始めてしまいます。レジリエント関連はベースとしていた社会が変わったので何をもって強靱というのか。強靱さと経済合理性は両立するのか、ベースから見直す必要があると思います。

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