ウィズコロナの状況を1ミリも悲観していない!ワーケーションを愉しむ若者たち
オンラインで日本全国と繋がる
緊急事態宣言からしばらくビジター受け入れができず、一人LACに常駐していたのが、角田尭史さん(29歳)。彼こそ“地方活性”に欠かせない「若者」だ。愛媛県出身、北海道大学大学院を卒業後、現在会社員と個人事業主を兼務し、2019年11月より東京と下田の2拠点生活を開始。住民票を下田に移した下田市民だ。「地方複業家」を名乗るだけあり、彼の手がける仕事は実に多彩。会社員としてはFrom ToというベンチャーでCHROという役員に就いている。CxO(各部門の最高責任者)の中でもCHROとは聞き慣れないが、Chief Human Resouse Officerの略であり、会社の事業戦略の部分にどっぷり関わる領域と言える。さらには個人でフリーランスチームを結成するなど、デジタルネイティブの世代らしく、ITを駆使した事業内容も事業域も幅広い。
角田さんは今年2月から下田市の山本建築株式会社のビジネス戦略に関わり、業務改善や採用支援をおこなっている。これは前出の梅田さんが繋いだ縁。社長の山本剛生さんと角田さんは親子ほども年齢が違うが、今では良いバディーとなり、ビッグプロジェクトを生み出しつつある。
それは500平方m以上もある古い倉庫を山本さんが購入し、下田と下田以外の人々を結ぶコミュニティーの場として再生するというもの。角田さんのSNS等を通じた呼びかけにより、20〜30代の若い世代の多くの男女がプロジェクトに参加した。
「ウィズコロナの状況を1ミリも悲観していません。むしろデジタルの発達で、地方と首都圏との情報格差がなくなり、“公平”になりました。これは大きなチャンス。ワクワクできるコト、仕事、出会いが、下田から全国に発信できるようになるのです」と角田さんの熱量は上がる一方。さらに下田だけではなくLivingNowhereという多拠点生活の様子を発信するFacebookページも立ち上げた。大志を抱いた「若者」はどこでも、いや、どこでもなく生きていけるのだ。
地元の若者たちに仕事を提供する夢
もう1人の「若者」は、伊豆急下田駅から普通電車で20分ほど、熱海に戻ったところに東伊豆町稲取という土地にいた。駅から海まで歩いて数分、風光明媚な港町として知られ、魚介類、特に金目鯛の美味しさでは下田と甲乙つけがたい。余談だが、伊豆半島では「河津男と稲取女」という言葉があるくらい、ここには美女が多いとか。
稲取でワーケーション事業を営むのが荒武優希さん(29歳)は神奈川県出身。芝浦工業大学在籍時代から稲取の空き家改修に携わり、同大学院卒業後、地域おこし協力隊員として稲取の住人になって4年以上が経つ。
「現在NPO法人ローカルデザインネットワーク(LDN)の代表理事として、『EAST DOCK』というコワーキングスペース、シェアキッチン『ダイロクキッチン』の管理をしています」という荒武さん。ダイロクキッチンは荒武さん自身の学生時代のグループ、イーストドッグは後輩の学生たちがスタイリッシュにリノベーションしていて、彼にとっては非常に愛着がある。特にイーストドックは海が目の前という絶好のロケーション。かぶりつきで海を眺めながら仕事ができるのも魅力だ。
しかし、LAC伊豆下田同様、まだまだ経営的には厳しい状態……。そこで、稲取の有名な温泉旅館とタッグを組み、滞在費を安くしたワーケーションプランを考案。空き家物件をリノベーションし、港町の暮らしを体感できる宿の提供もクラウドファンディングで叶える構想もある。
「LDNは、行政から補助金がもらえているので、なんとか首の皮一枚繋がっている感じ(苦笑)。このサポートを活用して新しいことに挑戦したいし、利益がきちっと出るようなビジネスモデルにしたいのです。なぜならこの土地には若者が働く場所がない。旅館業に従事する人はいるけれど、数年で辞めてしまうんです。彼らがここを離れていかないような仕事も提供したいですね」とビジョンを語る。それは、学生時代からよその土地の若者を温かく受け入れてくれた稲取への恩返しでもある。最近結婚して家庭を持ち、一家の大黒柱にもなった。移住5年目にして正念場を迎えた荒武さんの次なるフェーズに期待したい。
全国各地にワーケーション施設は数多く存在する。どこがいい、悪いはない。要はその土地の文化と人を理解し、尊敬し、そこで自分が楽しめるか。自分と相性が合うかどうか。まずはお試しワーケーションで見極めてみるのがいいだろう。