鉄鋼大手が取り組む廃プラの再資源化、加速する技術開発

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鉄鋼大手各社は廃プラスチックの再資源化に取り組んでいる。日本製鉄は、コークス炉を使う再資源化事業で処理量を2割増やすべく、廃プラを高密度化する技術を2年以内に開発する。JFEホールディングス(HD)も処理量拡大を目指す。政府は2035年までに容器包装プラを100%再利用・再生する目標を掲げる一方、対象外だった洗面器や文具などプラ製品を含む一括回収を22年度以降に始める方針。回収・処理量と再資源化率を高めるには官民の総力戦が欠かせない。

日本製鉄は年約20万トンの容器包装プラを処理しており、全自治体の回収量の約3割に当たる。室蘭(北海道室蘭市)、君津(千葉県君津市)、名古屋(愛知県東海市)、八幡(北九州市戸畑区)、大分(大分市)の5製鉄所・地区で再資源化事業を行っており、処理能力は合計26万トン。

容器包装プラの処理方法には、粉砕後に再成形し再生材にする材料リサイクルと、ケミカルリサイクルがある。日鉄が採用するのはケミカルリサイクルの中の「コークス化学原料化法」。廃プラを熱分解処理した後、炭化物、再生油、ガスとして有効利用する。そこで製鉄の還元剤であるコークスをつくるコークス炉で、廃プラを石炭とともに投入。支障がない品質や形状にするため事前に異物を除き、減容化し固形の粒状にする。

日鉄が今回開発するのは、減容成形機で狭い口から効率良く取り出す技術と、そのために使う摩擦熱の温度を制御する技術。これにより処理量を増やす。

同社は00年に事業を開始。累計処理量(分別基準適合物)は19年度末で328万トンを達した。二酸化炭素(CO2)削減効果に換算すると約960万トン。

一方、JFEHDの傘下企業は複数方式でケミカルリサイクル事業を行う。処理量はコークス化学原料化法が年約8000トン、高炉還元法が年約3万7300トンだという。京浜(川崎市川崎区)、福山(広島県福山市)の2地区で行っており、20年間の累計処理量は105万8000トン。

米中貿易摩擦や中国製素材の台頭で鋼材需要減に直面する鉄鋼大手にとっては、成長が見込める事業として廃プラの処理量を伸ばしたいところだ。しかし、大きな障壁が立ちはだかる。というのも現行の国の制度では、材料リサイクルを手がける中小事業者らに優先落札権があり、回収量は全体の約5割を占める。容器包装プラは複合素材が多いため、材料リサイクルでは残渣(ざんさ)が約半分発生するという課題もあるにもかかわらずだ。

ケミカルリサイクルを進める鉄鋼各社は、約85%と高い再生利用率や環境負荷軽減効果を誇り、設備余力を持つものの、数量的には不利な状況にある。

このため日本鉄鋼連盟は政府に、材料リサイクル優先政策に象徴される入札制度の抜本的見直し、国による廃プラ集荷量拡大策の早期具体化を要望している。「CO2排出削減や社会的コスト低減効果の高い廃プラの製鉄プロセスでのケミカルリサイクル拡大が、政府が進める温室効果ガス排出抑制や費用の最小化、資源有効利用率の最大化に適する」と強調している。日鉄などは要望するだけではなく、回収・処理量が増えても効率的に対応できるよう技術開発を進めている。「大企業VS中小事業者」という構図にもなりかねないが、そもそも低い自治体からの廃プラの回収・処理量を引き上げることに力を入れる必要があるだろう。

廃棄物問題では、我々の知恵と工夫で日常生活から使い捨てをなくすことが欠かせない。問題なのは容器包装プラの集荷・処理量は年間66万―67万トンと横ばいで、しかも回収する自治体の参加率が6割強にとどまることだ。実際に処理すべきプラがあるのに回収率が伸びない現状を打破するには、関係者が結束する必要がある。

折しも、海洋汚染などの深刻化から政府はプラ製のバケツや洗面器、文房具などのプラ製品も容器包装と一体で回収すべく、検討を始めるところだ。回収対象が広がり、処分量が全体的に増えれば、ケミカルリサイクルの鉄鋼大手も、材料リサイクルを手がける中小事業者も共存共栄する道が開けるのではないだろうか。

(取材・山中久仁昭)

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