富士通、ANA、JTB...広がる企業とJクラブの地域課題解決

  • 0
  • 6
サッカー観戦を楽しむ発達障がいのある子どもたち((C)J.LEAGUE)

プロサッカーリーグ「Jリーグ」は、社会連携活動を「シャレン!」と名付けて推進している。各地に点在するサッカークラブが企業や行政などと手を組み、社会課題の解決に取り組む活動がシャレン!だ。企業はシャレン!に参加すると地域との関係が深まり、本業による社会貢献の可能性を発見できる。広告を出して支援する従来型の企業とプロスポーツとの関係が変わってきた。

2019年7月、川崎市で開催された川崎フロンターレの試合で、発達障がいを持つ子どものサッカー観戦を支援する活動があった。フロンターレと川崎市、富士通、全日本空輸(ANA)、JTBによるシャレン!だ。

富士通は発達障がい者の感覚を疑似体験できる仮想現実(VR)動画を製作し、一般の観戦者に視聴してもらった。対戦相手の大分トリニータの地元・大分からも発達障がい児を迎えるため、ANAは飛行機が苦手な子も楽しく搭乗できる工夫をした。JTBの担当者も症状を学び、観戦をサポートした。

フロンターレと行政、企業が連携した活動は「Jリーグシャレン!アウォーズ」に輝いた。20年6月17日のオンライン報告会で、Jリーグの村井満チェアマンは「スコアボードの選手名がひらがなで表示された瞬間、スタジアムの空気が変わった」と当時の感動を思い起こした。障がいのある子どもと一緒に観戦を楽しみたい雰囲気でスタンドが一体になったという。企業担当者も「一過性で終わらせたくない」と語った。

Jリーグの全56クラブはサッカー教室などホームタウン活動を年2万5000回以上開いている。ファンを増やす目的もあるが、Jリーグの理事から「これってすごい価値。ちゃんと形にして伝えていくべきでは」と提言され、Jリーグとして18年、社会連携本部を発足した。

富士通は発達障がい児の感覚を疑似体験できるVR映像を制作し、来場者に視聴してもらった((C)J.LEAGUE)

ホームタウン活動のうち「3者以上の協働者と共通価値を創る活動」をシャレン!と定義し、地域の人や企業、行政、団体と連携した社会課題の解決を促進する。社会連携本部の鈴木順本部長は「いろいろな方と手を組むとアイデアも質も深掘りでき、インパクトを出せる」とシャレン!の効果を語る。

大宮アルディージャは地域の80社・団体が参加して「手話応援デー」を開いている。福島ユナイテッドFCには「農業部」があり、地元の農産物を仕入れて他クラブも含めた試合会場で販売している。クラブは広告以外の形でも企業との関わりが生まれており、鈴木本部長は「多様な連携が生まれるハブになれる」とクラブの存在価値を語る。

シャレン!に参加した企業は地域や他社、行政などと新しい関係を築ける。また、自社の技術やサービスを社会に役立てて、新規事業を創出する機会にもなる。Jリーグは企業に「クラブを使ってほしい」と呼びかけ、「シャレン!」の専用ホームページでアイデアを募集している。持続可能な開発目標(SDGs)の効果で社会貢献を指向する企業も増えており、クラブと企業が課題解決に挑むシャレン!が加速されそうだ。

日刊工業新聞2020年7月24日

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

記事にある報告会に参加したのですが、多幸感でした。企業担当者の思いが伝わってきました。しかもCSR・社会貢献部でなく、現場の担当者だったのが新鮮でした。非常に推進力を感じました。SDGs面では先週はロボット、今週はJリーグと、普段とは違う方面から取材しました。これからもバリエーションを増やしたいです。

関連する記事はこちら

特集