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「債務超過目前だった」…企業との関係見直すアルビレックス新潟の新戦略

是永大輔社長に聞く

サッカーJリーグのアルビレックス新潟は、企業との関係を見直す。広告費だけで結びついた「スポンサーシップ」から脱却し、新しい活動や事業を創出してお互いの課題を解決する「パートナーシップ」構築を目指す。地方都市に根付いたプロスポーツクラブの新戦略は、地域企業にも好影響を与える。海外でサッカービジネスを拡大した経験を持つ是永大輔社長(42)に狙いを聞いた。(聞き手・松木喬)

-パートナー企業を募集すると発表しました。スポンサーシップとの違いは。
「従来のスポンサーとクラブの関係は“資金を出す、受け取る”だ。それに企業は広告を出しても費用対効果が悪い。お互いが『良かった』と言い合える関係にならないと、広告費はカットされる。ではサッカークラブは何ができるのか。クラブの価値を深掘りしないといけない」

-アルビの価値とは。
「外部に依頼した調査によると、新潟県でのアルビの認知度は95%もあり、興味・関心がある層も5割近い。どちらの数字も大都市圏のクラブよりも高く、県内どこへ行っても県民は試合結果を知っている。新潟で特殊な存在であることが我々が資産であり、深掘りする部分だ」

ー何ができますか。
「パートナー企業の困りごとを一緒に解決したい。いま企業は人手不足が切実な課題であり、採用の支援に挑戦したい。例えば企業とサッカー教室を開催し、参加した子どもの家族がその企業で働きたくなるようなことができないかと仮説を立てている。『いいことしたね』で終わらず、成果を数字で表現できれば単なる広告費ではなくなる」

ー数値化は重要そうです。
「我々は2019年、Jリーグ最多となる1883回の地域貢献活動をした。他のクラブと比較可能な数字を示せれば、企業も安心して『アルビレックスを使おう』と思える。勝敗だけでは企業との関係も、クラブ経営も長続きしない」

-パートナー企業の交流会を開きました。
「企業同士の出会いも期待する。例えばパートナーになった縁で2社がクラブの関連商品を共同開発する。その商品を地元スーパーは売るだけでなく、食育の教材にして消費者に喜んでもらうなど、どの企業にもプラスとなるクラブの活用法があるはずだ。僕は一歩下がってクラブを見て、使い方を探す」

-アルビレックス新潟は大企業を母体とせず、Jリーグトップの集客を誇った時期もあり、地域密着型クラブの象徴でした。
「今までは“アルビレックス様”だった。努力をしなくても広告が集まると思い込み、債務超過が目前だった。今回、パートナー企業を再定義した」

-従来のプロサッカークラブ像から変わりますか。
「デジタル技術が発達しても、我々のようなライブエンターテーメントは生き残るし、もっと面白い世界を作り出せる。コアコンテンツはサッカーであるべきだが、それにヒモづくビジネスはある程度やっていく。最終的には電気、ガス、水道、アルビと言われる地域インフラになりたい。地域のコミュニケーションツールでありたい」

日刊工業新聞2019年12月3日記事に加筆
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
地方に行くと地元を良くしたいと活動する企業がいる。だが、1社では限界がある。企業が集まる場があれば連携が生まれ、地域課題解決ビジネスに発展するだろう。アルビレックス新潟が、志を抱く地域企業の出会いの場になると思った。地域から資金を集めるだけの存在では、プロサッカークラブも存続しない。

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