工事現場を変えるIoT、鹿島と竹中が遠隔操作システム開発
鹿島、竹中工務店は大型タワークレーンの遠隔操作システム「TawaRemo」を共同で開発した。クレーン運転席回りに設置した複数の高性能カメラの画像データを、基地局経由で遠隔地の専用コックピットに送信。専用モニターに映し出された画像を基にオペレーターが作業する。
クレーン側のジャイロセンサーにより、専用コックピットでも従来の運転席のようなクレーンの振動を体感できる。IoT(モノのインターネット)の活用で、遠隔操作による建材などの積み込みや荷下ろしなどの作業を可能にした。
運転は専用コックピットさえ設置できればどこでも可能になる。鹿島の伊藤仁常務執行役員副本部長は「ゲーム感覚での操作が可能で、若者に魅力ある職場としてアピールできる」と説明する。
タワークレーンのオペレーターは高所の運転席にほぼ1日中拘束される厳しい職場環境にあるため、人材確保が課題になっている。開発したシステムを導入すれば遠隔操作が実現し、身体的負担の軽減や作業環境の改善につながる。短時間や突発的な作業にも対応する。1カ所に複数のコックピットを配置することで、オペレーターの小人数化も可能だ。
10月には都内や大阪府内の建築現場で試運転を開始。コックピットの増産を進めながら2020年度内に本格運用を始める。
今回の開発には、カナモト(札幌市中央区)が、専用コックピットや通信システムのレンタル・運用・保守を担当。通信は第4世代通信(4G)アクセスプレミアム回線とカナモト開発の通信システム「KCL」で高い安全性と低遅延を実現した。今後は操作性を向上するため、第5世代通信(5G)回線の導入も検討している。建機レンタル最大手のアクティオ(東京都中央区)は保有するタワークレーンに同システムを順次導入する。
4社はIoTを活用することで、工事用機械への適用拡大を視野に協業を強める。(編集委員・山下哲二)