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常識を崩した!「バビネの原理」不成立、金属アレイでも電波透過を確認

常識を崩した!「バビネの原理」不成立、金属アレイでも電波透過を確認

穴あき金属板(右の2枚)と金属片アレイ(左の2枚)

滋賀県立大学工学部の酒井道教授ら研究グループは、携帯端末などの電波が物体を通り抜ける基本性質について、フィルターとなる金属板のパターンによって透過強度が変わるという「バビネの原理」が成立しないケースを確認した。従来、特定の周波数で透過しないのが常識とされていたフィルター構造でも透過する構造を突き止めた。次世代通信規格などでミリ波帯電波のフィルター設計で自由度が向上すると期待している。英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。

単純な金属板に穴が周期的にあいた構造と、その逆のネガパターンで金属片が周期的に並んだアレイ構造での透過強度をミリ波帯(60ギガ―95ギガヘルツ〈ギガは10億〉)を使って確かめた。

構造が薄い場合は穴あき構造では電波は設計周波数で透過し、金属片アレイ構造では透過しないという「バビネの原理」通りの結果が得られた。

厚みが波長の30分の1程度あれば、同原理が成立せずに両構造ともに透過することを確認した。同原理によればネガパターンのアレイでは透過強度は正反対になるとされている。これらから利用できるフィルター構造の幅が広がり、施設や端末の設計自由度が向上するという。

酒井教授は「厚みを加えるだけで常識と思っていた性質を崩せた。携帯端末や社会インフラにおいてフィルターの新たな設計指針として役立てたい」としている。

日刊工業新聞2020年7月20日

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