髪の毛からストレス値を客観的に判断!従業員の健康管理に役立てたい
【客観的に判断】
滋賀大学認定第1号ベンチャーのイヴケア(大津市)は、髪の毛に含まれるホルモンからメンタルの状態を捉える。既存のストレスチェックは主観に基づくため、体の状態を客観的に判断するのは難しい。生体情報を蓄積しながら伸びる髪の毛の特性を生かし、中長期でのストレス変化を把握できる。個人に適したケアを施し、健康をサポートする。
【最適ケア提案】
「健康のリスク管理に資する事業について、スピード感を持って実装したかった」と五十棲計(いそずみ・けい)社長は創業時を振り返る。体と心の充足感を得ることがウェルビーイングには欠かせない。喫煙などの欲求が長期的な健康に及ぼす影響を評価できれば、個人に最適なヘルスケアを提案することができる。
大学院時代には、最高技術責任者(CTO)を務める大平雅子滋賀大学准教授の研究室に所属していた。当時、毛髪から心的ストレスを評価するという、大平准教授の研究に対する反響は大きかった。いじめの研究を続けていた五十棲社長は「ストレスの仕組みは、いじめにおける個人と集団との葛藤と似通っている」と感じ、大平准教授による研究成果の事業化に意欲をわかせた。
同じ頃、隣接する研究室の芦谷道子滋賀大学教授にも声をかけた。臨床心理の専門家である芦谷教授はチーフ・ナリッジオフィサー(CKO)として同社に加わった。毛髪からストレス状態を把握し、個人に合わせた改善方法を提案する“オーダーメードヘルスケア”の実現にかじを切った。
試薬を用いて、毛髪内でストレスに関連するホルモン濃度を見いだす。根元からの長さに応じ、特定のホルモンが常に検出されれば、慢性的なストレスがたまっているなどの状態を把握することができる。主観によるストレスチェックでは良好と判断された人も、無意識的に身体には負荷が大きくかかっている場合がある。
【事業モデル構築】
例えば仕事量が多く身体にストレス負荷が蓄積されていても、対処能力が高い人は気づかないことがある。同社はストレスの蓄積量や抵抗力、向き合う力をグラフ化し、同年代の平均値と比較する。現在、検査結果に基づき、セルフケアを提案する事業モデルを構築中だ。改善方法が正しいか定期的にチェックし、個人の健康維持につなげる。
五十棲社長は「ストレスチェックと合わせて各企業の人事・管理部門などに提案し、従業員に適する仕事量の割り当てなどに役立てていきたい」と戦略を描く。(大阪・中野恵美子)