ニュースイッチ

コロナショックで鉱山閉鎖リスク、銅が高騰

コロナショックで鉱山閉鎖リスク、銅が高騰

電子部品に使われる銅の相場は景気回復動向を映す指標として注目される

銅地金の国際相場が急伸している。ロンドン金属取引所(LME)の銅地金3カ月先物は、日本時間13日午前に一時、約1年3カ月ぶりに1トン=6600ドル台に乗せ、直近2週間で約1割上昇した。銅鉱石の最大産地である南米チリで、鉱山労働者の新型コロナウイルス感染が拡大し、鉱山操業の縮小による供給懸念が高まっている。一方、銅地金消費の約5割を占める中国では景気回復が進展しているため、需給の引き締まりが一段と意識されている。

LMEの銅地金3カ月先物は、日本時間13日昼時点で同6580ドル近辺を推移。先週末比でも約2%高く、チリの銅供給懸念と中国需要の持ち直しを背景に騰勢が続いている。

銅鉱石生産の世界シェアで3割近くを占めるチリでは、新型コロナの1日当たりの新規感染者数が3000人前後で推移し収束の兆しがみえない。9日には、同国の銅公社コデルコの労働組合幹部が、累計で3000人近くの労働者が感染したと述べたと伝わった。コデルコは6月下旬に、新型コロナ感染防止のために主力のチュキカマタ銅鉱山の精錬所の操業を3分の1にすると発表。一時的な措置としていたが、操業縮小の長期化への警戒感が強まっている。

一方、需要面では中国の景気回復基調が材料視されている。中国自動車工業協会によれば、6月の中国の新車販売台数は前年同月比11・6%増と3カ月連続のプラスだった。

中国市場では株価も高止まりしている。中国の国営メディアが6日に、株式の強気相場を促すことの重要性を報じたことを足掛かりに、主要株価指標となる上海総合指数が約2年5カ月ぶりの高値圏まで上昇。目先では消費の手控えで「出遅れていた中国の小売売上高の動向が注目される」(野村証券投資情報部の神谷和男課長代理)。鉱工業生産は5月分が前年同月比プラス4・4%まで回復したが小売売上高は同マイナス2・8%と低調。16日発表の6月分でプラス圏に転じれば銅相場に強材料になりそうだ。

日刊工業新聞2020年7月15日
志田義寧
志田義寧 Shida Yoshiyasu 北陸大学 教授
新型コロナウイルスは様々な財・サービスの需要と供給に影響を与えている。この記事にある銅の高値は操業縮小、つまり供給制約が原因だ。一方、マスクなどの不織布の材料であるポリプロピレンは需要増が価格を押し上げた。日銀の『企業向けサービス価格指数(5月速報)』を見ると、国内航空貨物輸送が前年比58.9%上昇と、大幅に値上がりしている。これは減便・運休の影響で、輸送能力が低下したためであろう。つまり供給要因だ。鉄鉱石や石炭、穀物などを運ぶばら積み船の運賃から算出するバルチック海運指数は5月半ばを底に急速に戻した。それまでは自動車生産・販売の落ち込みで、鋼板などの需要が減少。その原料である鉄鉱石の需要が減り、それを運ぶばら積み船の運賃も下がっていたが、足元では中国の需要回復などが追い風になっている。その価格変動は需要と供給のどちらが原因なのか。それを見極めることは対策を考える上での第一歩となる。

編集部のおすすめ