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内視鏡の“標準”へ、オリンパスが探る次の一手

オリンパス カメラ撤退・医療機器集中(下)
内視鏡の“標準”へ、オリンパスが探る次の一手

オリンパスの内視鏡(公式動画より)


オリンパス カメラ撤退・医療機器集中(上):オリンパスが手放すカメラ事業、生き残りの最適解は?

医療+技術

内視鏡や治療機器に経営資源を集中する―。オリンパスはデジタルカメラを中心とした映像事業から撤退し、医療(メディカル)と技術(テクノロジー)を組み合わせた「真のグローバル・メドテックカンパニー」への成長軌道を模索する。新型内視鏡の発売をはじめ、医療機器分野の強化に動きだした。医療機関の経営悪化、ロボット手術への対応といった課題の克服が改革の鍵になる。

オリンパスは、映像事業の売却に道筋をつけつつ、内視鏡や治療機器といった医療事業をさらに強化する。

「米国食品医薬品局(FDA)の規制対応や、内視鏡の洗浄・滅菌サービスの充実など課題はまだ多い」と竹内康雄社長は強調する。

内視鏡を使った治療は患者への負担が小さく、国内外で需要が高まる。同社によれば、消化器内視鏡による国内の治療件数は02年に約50万件だったのに対し、14年には約114万件まで増加。市場調査会社の富士キメラ総研(東京都中央区)によれば、海外の内視鏡の生産金額は22年まで右肩上がりに伸びる見込みだ。

世界シェア70%

今から70年前に内視鏡の原型「ガストロカメラ」を発明して以来、同社は医師と共同で検査や治療の方法を生み出してきた。今では消化器内視鏡の世界シェア約70%を占める。さらに近年は泌尿器科や呼吸器科などの治療器具にも力を入れる。

3日には新型の消化器内視鏡を発売した。臓器の構造や腫瘍を観察しやすい複数の機能を備える。人工知能(AI)で診断を支援する技術も開発予定だ。竹内社長は「これからの内視鏡のデファクトスタンダードになる」と自信を見せる。

23年3月期までに営業利益率20%以上を達成するのが目標だ。ただし、新型コロナウイルスの感染拡大で出ばなをくじかれた。外来を受診する患者が減少し、医療機関の経営が悪化。内視鏡を含む設備の買い控えが生じている。更新需要を見込むオリンパスにとって一時的な逆風になる。

中長期的な課題もある。「ロボット手術などの外科領域は他社の後塵(こうじん)を拝している」と大和証券エクイティ調査部の葭原友子シニアアナリストは指摘する。硬性鏡という内視鏡を使った外科手術の領域では「ダヴィンチ」のような手術支援ロボットを使った症例が増えつつある。

M&A必要

オリンパスはこの分野で出遅れており、買収や提携で競争力を強化する必要があるという。「M&A(合併・買収)は以前から必要と考えていた」と竹内社長は強調する。競争力強化は必須だ。世界の医療機器メーカーと伍(ご)していくためにさらなる改革が必要になる。

(森下晃行、国広伽奈子が担当しました)
日刊工業新聞2020年7月10日

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