人間とロボットの適材適所でがん治療を支える放射性医薬品を作る

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ロボットアームによる遠隔操作で行う製造工程

放射性医薬品、需要増に対応

日本人の死因第1位のがんは、治療の多様化や高度化が進む。そうした中、検査や診断で重要となるのが放射性医薬品だ。放射線を検出して、がんの場所を調べたり、がん組織を攻撃したりする。富士フイルム富山化学(東京都中央区)の千葉工場(千葉県山武市)では放射性医薬品を製造し、治療のニーズに対応する。高度な生産技術が求められる医薬品をいかに製造し供給するのか、御前法生(みさき・のりお)生産技術部長に聞いた。(安川結野)

―放射性医薬品の需要は変わってきていますか。

「以前は診断用が多かった。近年は治療用の需要も増えてきている。血液がんの一種である悪性リンパ腫の診断と治療の両方が可能な放射性医薬品『ゼヴァリン』の発売以降、診断用のみならず、治療用放射性医薬品の開発にも注力している。今後、アンメットメディカルニーズ(未充足の医療ニーズ)に応えるものとしても需要が高まるとみており、それに対応できる製造体制づくりが必要だ」

―多数のロボットを導入しています。

「画像認識で不良品を自動判別するなど製剤や品質管理、梱包(こんぽう)、輸送にロボットを導入して自動化している。効率化に加え、人の介在を減らすことで事故のリスクを減らせる。一方で放射性医薬品は薬剤の性質上、患者の診療スケジュールに合わせて製造、輸送しなければならない。少量多品種の薬剤を取り扱うので、人による検査のほうが効率的な工程もある」

―専門人材の育成が重要です。

「放射性医薬品の製造には、粒子加速器(サイクロトロン)で光の速さのおよそ4分の1にまで加速した陽子を標的物質にぶつけ、放射性同位体(RI)を作る必要がある。加速させるスピードは作るRIによって微妙に異なるため、条件を調整する技術が求められる。専門外の人にも技術を習得してもらうため、技術指導や電気系の資格取得を推進するなど教育に力を入れている。神奈川や大阪の施設に人を派遣して技術指導を行っている」

―今後の計画は。

「いくつかの放射性医薬品は臨床試験中の段階だ。今後承認されれば製造が始まる。また、診断用放射性医薬品の『ウルトラテクネカウ』は長年製造を続けてきており、今後は医薬品製造品質管理基準(GMP)基準の厳格化に合わせた対応も必要となる。新基準や新しい医薬品に合わせ、製造ラインの構築を検討していく」

【ポイント/人とロボ、適材適所で】

放射性医薬品の製造に求められる効率化は特殊だ。放射性医薬品の特徴として、製造後から放射能が減少し、時間の経過とともに効果が変化する性質がある。そのため臨床のニーズが大きな意味を持っており、効率的な製造体制を確立することでタイムリーに対応できると言える。そこで製造を自動化しつつ、フレキシブルな判断や検査を人間が行う。人間とロボットの適材適所によって、がん治療を支える医薬品製造が実現する。

御前法生氏

日刊工業新聞2020年7月2日

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