JR東海「のぞみ12本ダイヤ」不発、輸送力増強の真価発揮はいつ?
JR東海は3月14日に、東海道新幹線全列車の最高時速を285キロメートルで統一した新ダイヤをスタートさせた。同日早朝、東京駅で一番列車の出発を記念した式典で、金子慎社長は「いつでも乗りたい時に、乗って頂ける。一段と便利さが増す」と期待を寄せた。ただ新ダイヤの“売り”である速達型「のぞみ」を1時間12本運転する「のぞみ12本ダイヤ」は、新型コロナウイルス感染症による需要低迷を受けて、発動できない状態が続く。
東海道新幹線のパターン(周期)ダイヤで1時間当たりの運転本数を増やすのは、2014年に「のぞみ10本ダイヤ」を施行して以来だ。20年に全列車の最高時速、曲線通過速度が同一の「N700A」タイプで統一されるのを見据え、15年に車両、施設、電気、営業の各部署が参加して検討会を立ち上げた。
新幹線鉄道事業本部運輸営業部輸送課の下村新課長代理は「検討を始めたのは、利用が増えていた時期。質も量も良くなるダイヤを目指した」と話す。
最も苦心したのは、東京駅の折り返しだ。「ひかり/こだま」や回送車両を含め、1時間当たり20回の発車をさばくため、清掃や発車準備といったオペレーションの効率化に工夫を重ねた。このほか電力設備の充実や駅の入線番線変更など各所で準備が進んだ。
のぞみは輸送力を高めるとともに、全列車が東京―新大阪間を2時間30分以内で到達するようにした。結果、品川駅開業と最高時速270キロメートル統一で“第2の開業”と称された03年以来の大規模なダイヤ改正となった。
東海道新幹線の利用者数は、東日本大震災以降に年率1―4%で成長し、18年度には1日平均47万7000人を数えた。座席利用率は66・4%と、70%前後の大手航空会社の国内線と遜色ない。連休前や週末の夕方以降といったピーク時間帯の供給不足は明らかで目いっぱい増発をしても追いつかなかった。
1時間当たり2本、2600人超の最大輸送力が増えることで、下村課長代理は「どういう利用になるか、動きを見てみないと分からない」と話す。利便性向上につながるが利用者の行動を予測するのは難しく、コロナ禍を経た“働き方改革”の影響も読みづらい。
JR東海は、のぞみ12本ダイヤの初回発動日を8月7日に設定している。これは「たとえ乗車率が低くても余裕をもって乗ってもらえるように」(金子社長)との判断だ。輸送力増強の真価を発揮するのは、今のところいつになるのか見通しは立たない。
7―8月の運転本数は回復
JR東海は東海道新幹線の7、8月の運転本数を1日平均351―389本、前年比95―97%に回復させる。新型コロナウイルス感染症による移動制限が緩和されて利用客数が緩やかに回復しており、現在の定期列車を基本とした運転で前年比80%前後から臨時列車を増やしてほぼ前年に近い水準に戻す。8月7―17日のお盆期間中は1日平均431本、前年比103%と前年を上回る計画。8月16日には過去最多の1日455本を運転する。