NTTと資本提携。NECは千載一遇の好機を生かせるか
NTTとNECは25日、次世代通信規格「5G」技術の共同開発を柱に資本・業務提携すると発表した。NTTがNECに約640億円出資する。車の自動運転や遠隔医療を支える基幹インフラをめぐっては、中国通信機器最大手・華為技術(ファーウェイ)など海外勢に出遅れており、国産連合を形成して国内外で巻き返しを図る。
NTTの出資比率は約5%となり、NECの第3位株主に浮上する。両社は、国内で3月に商用化が始まった高速大容量の5G通信回線を、高度に制御する基幹装置などの開発に取り組む。
さらに、5Gの最大10倍の速度を持ち、官民で2030年ごろの実用化を目指す6Gを見据え、NTTの光技術による新たなネットワーク構想「IOWN(アイオン)」でも協力を深める。NTTは長期的な関係を築くためNECに出資する。
5G対応スマートフォンなどへの通信に欠かせない基地局設備は、世界的にファーウェイとフィンランド・ノキア、スウェーデン・エリクソンの3強が圧倒的なシェアを占める。米中のハイテク覇権をめぐる争いや新型コロナウイルスの影響で保護主義的な動きが強まる中、NTT・NEC連合は複数メーカーの機器を組み合わせてネットワークを構築するオープン化戦略を進め、3強への対抗軸形成を狙う。
新成長の軸が定まった
NECにとって、NTTとの資本提携は第5世代通信(5G)を起点とする成長戦略の大きな柱となりそうだ。5G網を構成する中核機器は無線機やアンテナなどの無線基地局であり、そのグローバル展開を目指すNECにとっては千載一遇のチャンス。NTT―NECの日本連合として、5Gおよび5G以降に向けた新成長への軸が定まった格好だ。
主たる製造部門を持たないNTTにとって、通信機器メーカーの老舗であるNECと組むことの意義は大きく、5Gおよび5G以降の次世代通信分野での存在感を増す効果が見込まれる。約5%の出資により、NTTはNECの第3位の株主となる。
NTTとNECとの関係は旧電信電話公社時代にさかのぼる。NECは電電ファミリーの“長男”として、通信網の開発・製造において中心的な役割を担ってきた。かつてNECは電子交換機などで世界市場のビッグプレーヤーとして君臨していたが、携帯電話の無線基地局の海外展開は出遅れ、スウェーデンのエリクソンやフィンランドのノキアの後塵(こうじん)を拝している。一方で4Gからは海外市場で中国・華為技術(ファーウェイ)が台頭する中で、次の一手が問われていた。
月初に、NECは楽天モバイルと共同で、5G単独で構成するスタンドアローン方式の基幹回線網の開発計画を打ち出した。21年以降、海外携帯通信会社への販売も見据える。
18年には韓国サムスン電子と協業し、5G関連の製品・サービスの海外展開に向けて先鞭(せんべん)を付けた。
楽天やサムスン電子との協業はNECの海外戦略にとって、新しい軸ではあるが、成功への道のりは平たんではない。これに対してNTTとの日本連合は大きな柱であり、さまざまな相乗効果が期待できる。
海外での新成長と、もうかるビジネスモデルへの転換―。これはNECにとっての経営課題だ。同社は20年度に3カ年の中期経営計画が終了する。今回のNTTとの資本提携は21年度からの新中計を大きく左右するのは言うまでもない。
米中対立の激化や世界中で保護主義が強まる中で、社会インフラを担う5Gサービスをめぐる競争も激化している。5Gをはじめとするデジタル基盤をめぐる主導権争いは通信事業者だけでなく、中国勢やGAFA(米大手IT4社)なども含め、大競争時代に突入していく。NTT―NEC連合は地殻変動の先駆けであり、今後もさまざまな連合が登場しそうだ。