大田区の信頼関係を活かして!人工心臓などの試作開発手掛けるニッチでユニークな町工場

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製作中の医療用試験装置。各種機器の試作開発を強みとする

医療機器試作、加工に外注活用

安久工機(東京都大田区、田中隆社長、03・3758・3727)は、大学や研究機関の依頼で人工心臓をはじめとした医療機器、精密機器に加え、一般産業機器などの試作開発を手がける。設計などの強みや技術継承の取り組みについて田中社長に聞いた。(南東京・増田晴香)

―医工連携に対応できる設計力が強みとなっています。

「先代の時から医療分野とのつながりはあった。また、私は安久工機に入社する前、大阪の国立循環器病研究センターの研修生として人工心臓や試験装置の製作に携わった。そこでは先生方の要望を徹底的に聞き、確実に引き出し、形にすることを学んだ。今でも設計で確認を怠らない点は大事にしている」

―多種多様な試作開発に挑戦しています。

「書籍や展示会を通して蓄積したアイデアを必要なところで活用している。すべて一から作るのではなく、コストを抑えるため使える部分は市販品を使う柔軟性も重要だ。社内の設備を最小限とし、加工は大田区内を中心とした約50社の協力企業に外注している。外注先も当社の財産だ。今後も関係を維持していきたい」

―人材育成や次世代に向けた取り組みは。

「設計に関しては担当の社員や自分の息子に少しずつ技術の伝承を進めている。引退までに、私の頭の中にあった設計の段取りを言語化して伝えたい。常務の息子は元々、経営管理ソフトの会社にいた関係で、以前はおおまかだった顧客数や注文数などを数値化してくれた。今後は工程管理に関しても『この工程はこの企業に発注する』といったことを若手にも分かりやすく見える化したい」

―自社製品の開発にも力を入れています。

「当社は試作開発がメーンなので毎月の受注が安定しない。現在、自社製品は売上高の1割に満たないが、今後は売上比率を上げていきたい。製品の折り畳み式カラーコーン『パタコーンNN型』は累計約5万本を販売した。簡単に折り畳みや組み立てができ、収納・運搬に役立つ。視覚障害者用の触図筆ペン『ラピコ』も好評だ。蜜ろうで書いた絵や文字を触って確認できる。特許も活用し、他社にまねできないニッチな市場を狙いたい」

田中社長

【ポイント/自社製品に発想力生きる】

早稲田大学や東京女子医科大学との人工心臓の開発プロジェクトに携わり、医療分野でノウハウを蓄積したことで多数の開発実績につながった。製造業が集積する大田区を中心に協力会社との信頼関係を基に、モノづくりの“コーディネーター”として発注元の幅広いニーズに対応する。試作開発で培った発想力は自社製品にも生かされる。ラピコは視覚障害者が「描くこと」の楽しさを体験できる製品で、福祉分野から高い評価を得ている。

日刊工業新聞2020年6月25日

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