企業の枠を超える100人の若手エンジニア集団、SDGsボードゲームを愉しむ

未来技術推進協会、創造性とイノベーションの発揮に

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SDGsボードゲーム(未来技術推進協会公式サイトより)

企業の枠を超えて若手エンジニアが集まる「未来技術推進協会」は8月、設立から3年を迎える。「自分の専門を生かしたい」「社外の人と交流したい」という思いを持ったエンジニアが参加し、会員は100人を超えた。持続可能な開発目標(SDGs)が協会運営の原動力であり、若手の自発的な活動が働き方改革やオープンイノベーションにもつながっている。

未来技術推進協会は3年前、会社帰りの若手エンジニアが始めた勉強会が原型だ。エンジニアが講師を務め、大学で学んだことを教え合っていた。大企業に勤務している山田慎也さんは「学ぶことに意欲的だった」と当時の熱気を思い出す。参加者が友人を誘うようになり30人、40人への規模が拡大した。

「協会を作る」。機が熟したころ、大企業で働く草場壽一さんが言い出した。草場さんは大学院時代に行った米国で、社会課題解決につながる研究を目にした。「同じことをしたいと個人で言ってもすぐに聞いてもらえないので、組織を作ろうと思った」と語る。

ある会食でSDGsを教えてもらい「漠然とした思いが、しっくりした」ことも影響した。SDGsには「民間セクターに課題解決のために創造性とイノベーションの発揮を求める」と書かれている。草場さんは退社し、協会の代表理事となった。

協会設立直後、朝6時から会合を開くこともあった。副代表となった山田さんは「とにかくテンションが高かった」と振り返る。技術で社会課題を解決する起業を支援するという協会の目的はあるものの、勉強会や交流が活発となり「企業に所属するエンジニアのモヤモヤの受け皿であり、自由度の高い組織」(草場さん)になった。

目標の共有を強要しないためか、協会から得るものも参加者によって違う。児玉渉さんは大学院でロボットとデザインを学んだが、会社では違う分野に配属された。「興味をぶつける場が欲しかった」と語る。

協会ではSDGs達成を疑似体験できるボードゲームのデザインに携わった。このボードゲームは協会の参加者が開発し、学校や企業からの引き合いが多い。児玉さんは会社以外での実績を「自分のブランディングになる」と語る。

高橋恵さんはベンチャーで経験を積んで独立した。協会で吸収した知識を仕事に生かし、報酬アップにつなげている。同じくフリーランスの宇野祐介さんも協会で事業開発のスキルを身につけ、人脈も築いて仕事を獲得している。隼野恵理さんは「“大物”と呼ばれる人に会いに行き、協会への協力を取り付けた。エンジニアのキャリアしかなかった自分が営業もできた」と、自分の新しい一面に気づいた。

参加者は会社以外でも活躍の場を持ち、自身の目的を達成している。SDGsで「働きがい」や「連携」が目標として示され、企業によっては副業制度やオープンイノベーションの専門部署を設けている。未来技術推進協会のエンジニアの声を聞く限り、若手の自発的な活動を尊重することが、働き方改革やオープンイノベーションにつながりそうだ。

日刊工業新聞2020年6月5日

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

企業の枠にとらわれない組織らしく、どなたも所属企業名を名乗らず(というか気にせず)に取材に協力してもらいました。地方に行くと中小企業が大手OB、大学、近所の会社と連携して製品を開発している事例があります。その中小企業には「オープンイノベーション部」はありません。必要に迫られ、自然とオープンイノベーションへ発展していると思います。あえてオープンイノベーションを制度化しなくても、社員の社外活動を認めると連携しやすくなると思います。

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