カギは中堅・中小企業の動き、依然残る“脱プラ”への課題
プラスチックゴミの海洋汚染が国際問題となり、プラ製品の使用を減らす“脱プラ”が叫ばれて1年以上が経過した。石油由来プラの代替素材を生産するベンチャーに追い風が吹いた。一方、大企業のサプライヤーとなっている企業の感度は鈍いようだ。ビジネスチャンスの獲得のためにも、サプライヤーにも脱プラの潮流から取り残されない努力が必要といえそうだ。
「すさまじい勢いだった」。環境経営総合研究所(東京都渋谷区)の松下敬通社長は、創業から20年で訪れた活況に驚きを隠せない。同社は紙を粉々にした「紙パウダー」と石油由来プラを混ぜ、通常のプラスチックのように自由な形状に加工する技術を持つ。紙の含有で石油由来プラの使用を削減する“脱プラ素材”として注目されるようになった。食品容器などに採用され、出荷は前年度比2・5倍に急増。生産ラインの増強を急ピッチで進行中だ。
活況を冷静に分析すると課題も見えてきた。「消費者向け商品を扱う大企業ほど脱プラに敏感」(松下社長)だが、サプライヤーとなっている中堅・中小企業の動きの鈍さが気になる。世間でプラ問題が騒がれても、取引先から指示がないと代替素材への切り替えを検討しないサプライヤーが目立つ。「言われたまま右から左へと商品を作るだけだと、取り残される」と語る。逆に率先して採用すれば、大企業との取引チャンスになる。
石油由来プラと同じ価格での供給を求める企業にも、首をかしげる。採用が価格次第だと「プラ問題を理解できていない」と指摘する。また、コスト削減を重視する風潮が続くと国内製造業は疲弊し、開発した技術も育たない。低コストを求めて海外調達が進むと「サプライチェーンが途絶える」と警鐘を鳴らす。
ウッドプラスチックテクノロジー(鳥取県倉吉市)もプラ問題の恩恵を受けた。同社は木材を細かくした木質材料と石油由来プラを混ぜた形成品の製造で08年に起業。商品搬送に使うパレット、重機や車両が移動できるようにする敷板を製品化してきた。
中山東太社長は「再生プラが集めやすくなった」と変化を語る。木質材料と混ぜる石油由来プラに再生プラを採用している。17年末、中国が廃プラの輸入を制限すると日本国内で廃プラが処理しきれない事態が起きた。行き場を失った廃プラがリサイクルに回り、同社も再生プラを入手しやすくなった。
敷板を中心に製品への注文が増えた。また、木質材料と再生プラの混合素材にも引き合いが来るようになった。脱プラを商機と感じた企業が素材を購入してプラ代替製品の開発を試みるという。中山社長は「潮目が変わった」と語る。
日本で発生する廃プラは年900万トン。そのうち3割近くは製品に再利用されるが、6割は化石燃料代替として焼却している。また中国などに年150万トンの廃プラを輸出していた。日本の国民1人当たりのプラ廃棄量は世界2位であり、プラの使用抑制と国内でのリサイクルが求められている。