米国最大の工作機械展示会が中止に、「想定内」でオンラインシフトへ
9月14―19日に米シカゴで開催予定だった「国際製造技術展(IMTS)2020」が、新型コロナウイルス感染症の影響により中止に追い込まれた。工作機械の一大市場である米国で貴重な商談の機会がなくなり、出展を予定していた日本企業への影響は小さくない。ただ各社は、現地での新型コロナの影響長期化を見据え、今回の中止決定前から対策に乗り出している。
「新型コロナで混乱したサプライチェーン(供給網)の再考や再構築を支援するためのリソースを提供する準備ができていただけに、開催中止は大きな痛手だ」。IMTSの主催者である米国製造技術協会(AMT)のピーター・エールマン副会長は、声明で悔しさをにじませた。
自動車産業の低迷などに新型コロナの感染拡大も重なり、受注環境に厳しさが増す米国。日本メーカーにとって海外受注全体の約3割を占める巨大市場だ。IMTSへの出展も年々増えている。日本工作機械工業会によると会員企業100社の内、前回の2018年のIMTSへの出展数は52社。今回も同程度の出展数に上るとみられていた。
一方、足元の新型コロナ感染状況などを踏まえると、中止はやむなしの見方が既に濃くなっていた。シチズンマシナリー(長野県御代田町)の中島圭一社長は「米国市場が厳しい中、開催されれば良いチャンスだったが、中止は想定内」と受け止める。
そのため各社は、個別展示会の開催やデジタル対応の強化に乗り出している。牧野フライス製作所は、オンライン展示会の開催を中心に、デジタルツールを駆使したプロモーションを展開する予定。ブラザー工業も「展示会に代わり、オンラインで顧客に価値を届ける方法を検討する」(広報担当者)としている。
オークマの家城淳社長は、日本国際工作機械見本市(JIMTOF)の中止への対応と合わせ「バーチャルの展示会や、来場者を分散する各営業拠点での展示会を検討している」と語る。ヤマザキマザックも「今後もITの活用を進め、自社展示会も充実させていく」(広報担当者)と代替策を模索する。アマダマシナリー(神奈川県伊勢原市)も、現地の自社展示場を使い、個別に顧客ニーズに即した加工の実演やテスト加工を実施するほか、展示場と客先をオンラインでつないだリモートの提案にも力を入れる。
牧野フライス製作所の高山幸久執行役員営業本部長は「新型コロナが大きなトリガーとなって、リアルとデジタルの両建てが今後の潮流となる」と見通す。国際展の開催は当面難しいとみられる中、各社がリアルとデジタルの連携に取り組むことで、プロモーションの“新しい形”が作られていきそうだ。
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