マウスもダメ、犬もダメ…実験用動物の飼育・販売業者が倒産に追い込まれた“外圧”
日本医科学動物資材研究所は、4月1日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。同社は医科学実験用動物の飼育と販売を手がけ、設立から50年以上にわたり医薬品開発の一端を担ってきた。同業他社が少ないなか、世界有数メーカーの日本総代理店となるなど業容を拡大し、動物試験受託機関をはじめ医薬品メーカー、医薬品開発業務受託機関(CRO)、大学研究機関など約400社に販路を構築。2008年6月期に年売上高約12億2300万円を計上していた。
そんな同社も9年前から損益分岐点を割るようになる。理由は大きく二つ。犬など大動物を中心に動物愛護団体の反発などから得意先が利用を控えるようになったこと。最も大きな理由が、主力であるマウスなど小動物の受注が医薬品開発手法の変更によって大幅に減少したことだ。時代の流れとともに動物実験への風当たりが強くなり、苦戦を余儀なくされていった。
加えて一部得意先とのトラブルが発生し、受注がキャンセルとなるなど厳しい状況が続くなか、約4年前から年間5000万円の赤字を計上。固定費削減のため生産所の一部を閉鎖するなど経営改善に努めたが、運転資金など金融機関からの借入金の返済負担が重く、資金繰りが悪化した。
売り上げ減少に歯止めがかからず、18年6月期の年売上高は約7億1700万円に減少。近時はメーンバンクと事業継続に対する方針が異なったことも加わり、代表自宅の売却など手を尽くしたが、19年9月30日に事業を停止。債務整理を弁護士に一任するなか、再始動に向け、さまざまな手段を考慮したが奏功せず、今回の措置となった。
同社の業績悪化要因は、動物愛護団体からの反発や医薬品開発手法の変更など、時代の流れに適応できなかったことと言える。リスケの要請や事業所の閉鎖など業容改善に手を尽くしたものの、根本的な売り上げの回復に手を打てなかったことが致命傷となった。
(文=帝国データバンク情報部)