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漆を布に塗ってブックカバーや名刺入れに。曲げられる漆、できました

鈴善(福島県会津若松市、鈴木健太郎社長、0242・22・7401)は、布に漆器をコーティングした布胎(ふたい)漆器を開発した。漆は時間経過とともに固まって柔軟性がなくなるため、布への使用は困難だった。同社では漆に塗料柔軟剤を添加して塗り込むことで、自由に曲げられる布胎漆器の開発にこぎ着けた。まず各種ケースや貴重品入れなどを製作しており、デザイナーと組んで高付加価値製品の拡充を目指す。

福島県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターの協力で開発した。鈴善は創業1832年の老舗で、会津漆器を代表する企業。漆器を布に塗る布胎漆器を数年にわたって開発してきたが、漆の固化や割れ・白い膜(ヒビ)の発生などで製品化が難しかった。

今回の開発ではナイロン、ポリエステル繊維といった1メートル四方の化学繊維の布を張り込み、少量の塗料柔軟剤(市販品)を添加した漆の粒子を染み込ませるように塗り込む。その後、2週間乾燥して造り上げる。布の厚さに合わせて漆を染み込ませるが、芯まで入らないようにして布繊維の特徴を残す。

すでに各種ケースやブックカバー、名刺入れなどを数千円で商品化した。今後デザイナーと組んで、商品の構成を広げる。木綿、麻などの天然素材の布に漆を塗る布胎漆器も開発する。

会津漆器は漆器製品への需要減少で販売事業者も減少。製造出荷額はピーク時の1983年度の163億円が、現在は20億円程度に落ち込んでいる。鈴善では布胎漆器で時代にマッチした製品を提供して、会津漆器の魅力と文化の継承につなげることを目指す。(いわき)

日刊工業新聞2020年6月10日

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