コロナ禍で大打撃の「シェアリング」、それでも日本で成長する皮肉なワケ

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コロナ禍で大打撃を受けた業態のひとつが「シェアリングエコノミー」だ。デジタル技術を使ってモノやスペースを共有するビジネスだけに衛生概念の重要性が顕在化したことで、強烈な逆風が吹いた。アフターコロナでの成長を疑問視する声もあるが、日本に限れば、市場が堅調に成長する可能性が高い。

コロナウイルスの感染拡大に無傷な企業はないが、シェアリングエコノミーほど明暗が分かれた業態はないだろう。家事育児代行や専門家によるビジネススキル遠隔講義などケアシェアやナレッジシェアの需要が増えた一方、モノやスペースを共有するビジネスは経営戦略の再考を迫られているといっても過言ではない。民泊仲介大手の米エアビーアンドビーやライドシェア大手の米ウーバー・テクノロジーズは3割近い従業員の解雇を発表している。

今、議論の的になっているのは、果たしてアフターコロナの時代に人々は以前のようにモノやスペースを積極的にシェアするかだ。

公共交通機関では以前よりも他の客と物理的な距離をとるようになり、マイカーが復権し、あらゆる分野で中古より新品を好む消費者が増えるのか。キヤノングローバル戦略研究所の研究主幹である杉山大志氏はレポート「コロナ禍で『シェアリングでエコ』というシナリオが崩壊する」の中で「衛生観念なるものは、表だって意識はされていなくても、暗黙裡に、結構重要だったのかもしれない」と述べている。また、シェアリングの動機を経済的側面であると指摘し、「人々の所得が向上するにつれ、シェアリングから離れてゆくことになる」と推測する。

シェアリングを利用する動機としては、エコ意識の向上やそれに派生する「所有から利用」へのライフスタイルの転換など世界的な価値観の変化が大きいと思われがちだが、日本では経済的動機が根強い。野村総合研究所が15ー69歳の男女、約2000人に実施したアンケートによると、シェアリングに求める改善点は「提供価格の低下」が最も多く、37・1%を占めた。

注目すべきは同アンケートが2020年4月22-24日に実施されていた点だ。日本国内でも新型コロナウイルスが爆発的に増える懸念があった時期である。そうした時期でも、価格の低下への関心が最も高く、「消毒・清掃」の24・6%を大きく上回った。人々はコロナ禍にあっても、シェアリングに衛生面よりも、経済的側面を強く望んだというわけだ。

IMF(国際通貨基金)の予測によると、日本は今後40年でGDP(実質国内総生産)が25%以上減少するという。果たして、日本のGDPが4分の3にまで縮むかは細かい検証が必要だが、現行の枠組みの延長線上に成長が見込めないとの認識は誰もが一致する見解だろう。

つまり、所得の向上が望めないどころか、実質賃金も下がる可能性があると想定するならば、人々が経済的動機に誘引される可能性は増えることはあっても減らないのではないか。日本はシェアリングエコノミーにとって皮肉にも「有望市場」といえるのかもしれない。

 

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