ドコモもKDDIもソフトバンクも…AI画像解析に商機
携帯通信大手が人工知能(AI)を活用して映像や画像を解析する商材の普及に力を注いでいる。各社が気を配るのは簡便さだ。複数のAIアプリケーション(応用ソフト)の中から使いたいものを選んで購入できる仕組みを展開したり、画像解析用サーバーを顧客の拠点に設置せずに済む枠組みを提案したりし、導入しやすさを追求する。各社は具体的な活用事例も示し、多くの企業のデジタル変革(DX)につなげられるかが問われる。(取材・斎藤弘和)
【多彩なアプリ】
NTTドコモはEDGEMATRIX(エッジマトリクス、東京都渋谷区)と提携し、施設やオフィスといった現場でカメラ映像をAI処理するプラットフォーム(基盤)の提供を5月28日に始めた。屋内外に設置する機器「エッジAIボックス」で取得する映像データを即時に閲覧できるほか、AIによる映像解析で危険や異常を検知した際は、メールなどで警告する。
同基盤上で利用するAIアプリの購入ができることも特徴。当初は「顔と体温検知」「赤ちゃんうつぶせ寝検知」「侵入検知」など5種を提供。順次追加し、年内に20種類超の展開を目指す。企業にとっては選択肢が提示されていることで、利用シーンが想像しやすくなるとみられる。
【スペース不要】
KDDIは人や物体の動きを分析する商材「AIカメラ」の受注を目指している。第5世代通信(5G)を介してクラウド上のサーバーに映像を送り、AIで画像解析処理を行う。解析内容によっては、ほぼ即時に結果が通知される。導入企業は自社拠点に画像解析サーバーを置く必要がなく、機器設置コストの削減につながる。
想定される用途は店舗における消費者の滞在時間分析や、駅ホームからの乗客転落の検出など。KDDIは鉄道や小売りなど、多様な顧客から引き合いがあるとする。5Gサービス地域が拡大すれば受注が加速しそうだ。
ソフトバンクは傘下の日本コンピュータビジョン(東京都千代田区)が開発したAI検温ソリューション「センス・サンダー」の普及を図る。AIを活用した顔認識技術と赤外線カメラにより、対象者がマスクや眼鏡を着けたままでも所要0・5秒で体温を測定可能。ソフトバンクの本社ビルや販売店で導入しており、ソフトバンク本社では入館管理にも使われている。
【来場者に検温】
新型コロナウイルス感染症の影響で企業の関心は高く、イオンモールの施設で従業員の体調管理のために採用された。TOHOシネマズ(東京都千代田区)への納入も決まり、劇場来場者の検温で活用される見込み。
通信各社の商材は導入への敷居が比較的低いと考えられ、企業のDXの後押しにつながる可能性はある。成功事例を早期に積み重ね、新規顧客の開拓につなげる好循環を実現できるかが試される。