5Gで進むコネクテッドカー技術、異業種と手を組む自動車各社のスピード勝負

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日産自動車は5Gを用いて車内で仮想空間を可視化した

自動車メーカー各社が2020年に利用が本格化する第5世代通信(5G)を使った、コネクテッドカー(つながる車)ソリューションの確立に動きだした。IT企業など異業種の知見を取り込み、商品やサービスなどへの展開を急ぐ。高速・大容量、低遅延という5Gの特徴を生かして、車の利用者や社会の課題をどのように解決するのか。自動車が5Gの活用によって、さらなる高次元の工業製品へ進化する可能性を秘めている。

トヨタ、NTTと連携

【次世代の街づくり実証】

3月に資本業務提携を発表したトヨタ自動車とNTTは、コネクテッドカーや5Gといった先端技術を軸に、次世代都市のプラットフォーム(基盤)づくりを目指している。互いのノウハウなどを集め、都市を効率的に管理する「スマートシティー」の事業化を進める。両社は17年にコネクテッドカー向け情報通信技術(ICT)基盤の開発で協業し、18年12月から実証実験を進めてきた。「両社で作ったプラットフォームを世界に提供する」(豊田章男トヨタ自動車社長)ために、人や車、住宅、インフラなどのデータをつなぎ、都市の効率化や付加価値を向上させる技術基盤「スマートシティープラットフォーム」に昇華させる。

トヨタとNTTは5Gを軸に次世代都市のプラットフォームづくりを目指す

まずは互いが構築する次世代都市に技術を実装する方針。資本提携で調達した資金のうち、それぞれが500億円ずつを投じる。トヨタは20年末に閉鎖を予定するトヨタ自動車東日本の東富士工場(静岡県裾野市)跡地に、コネクテッド・シティー「Woven City(ウーブン・シティー)」を21年から着工し、次世代の街づくりの実証試験を計画する。NTTは東京都港区の品川駅前の街区を強化する。

構想実現に向けて中核技術の一つになるのが5Gだ。あらゆるものをつなぎ、機能させるためには5Gの超高速(最高伝送速度毎秒10ギガビット〈ギガは10億〉)、超低遅延(1ミリ秒程度)、多数同時接続(1キロ平方メートル当たり100万台の接続機器)の特徴などを生かせるかがカギを握る。すでにトヨタはコネクテッド技術を搭載した車を発売している。だが、スマートシティーや高レベルの自動運転などで求められるコネクテッド技術は通信速度や容量が段違いだ。5Gと車のコネクテッドカー機能を軸に、次世代都市の設計や新しい移動体験を探る考えだ。

車内の過ごし方変わる

【仮想空間で分身操作】

トヨタとNTTのほか、ホンダとソフトバンクは17年11月から5Gを活用したコネクテッドカーの分野で共同研究を始めている。すでに開発向け検証環境を構築し、商用化に向けて検証しているという。

検証に向けて、ホンダが北海道鷹栖町に持つテストコースに実験基地局を設置した。国際標準化団体の3GPP規格に準拠したノキア製通信機器を用いて5Gネットワークを構築し、4K映像を伝送可能にした。

SUBARU(スバル)もソフトバンクと組み、5Gと、車両間や路車間通信の無線技術「セルラーV2X通信システム(C―V2X)」を活用したコネクテッド技術に関する共同研究を始めた。安全運転支援や自動運転制御に関わる技術実証を行う。スバルやホンダは実証結果を車両やサービスの設計に反映していくとみられる。

一方、日産自動車はNTTドコモと共同で、自動車内に仮想空間を可視化する「インビジブル・ツー・ビジブル(I2V)」の実証実験を始めた。I2Vにより、インターネット上で自らの分身として存在するキャラクター「アバター」などを使った英会話や映画鑑賞、観光体験などのコネクテッドサービスを提供できる。

5Gを用いることで走行中の車両でI2Vを実現する。自動運転やコネクテッドカーが普及する将来を見据え、車内の過ごし方が変化することに対応していく。

I2Vは仮想世界と車をつなぎ、車内外のセンサーで集めたデータとクラウド上のデータを統合して人の目には見えないものを可視化する技術。運転手やアバターを操作する人が装着した拡張現実(AR)ゴーグルに現実世界を重ね合わせることができる。

例えば、クルマの前方状況や建物の裏側などリアルな情報のほか、水族館やアバターなど仮想空間をドライバーの視野に映し出す。走行中もアバターの位置がぶれない点が特徴だ。高速・大容量通信の5G技術を組み合わせ走行中の複合現実(MR)を実現した。今後はサービスの完成度向上が各社の競争軸となりそうだ。

KEYWORD コネクテッドカー

コネクテッドカーとは情報通信端末としての機能を有する自動車。すでに自動車はカーナビゲーションシステムなど通信機器が搭載されており、一部の情報を外部と通信することは可能だ。だが5Gを活用することで、高速かつ大容量の情報を扱うことができるためコネクテッドカーの機能が拡大すると言われる。また、運転手や道路の状況などを車を介して集め、分析することで新たな価値創出も可能とされる。具体的には自動運転技術の高度化やシェアリングサービスの利便性向上、走行実績に応じて保険料が変動する「テレマティクス保険」の拡充などが期待される。

DATA 世界市場、35年1億250万台

富士経済(東京都中央区、清口正夫社長、03・3664・5811)によれば、コネクテッドカーの世界市場は2035年に乗用車で17年比4.4倍の1億250万台に拡大する見通しだ。同社はIVI(車載インフォテインメントシステム)搭載のコネクテッドカーを、車載通信機を用いる「エンベデッド型」とスマートフォンなどを使用して接続する「モバイル連携型」に大別している。

特に「今後は車載通信機を用いるエンベデッド型が伸びる」(富士経済)と分析している。エンベデッド型は常時接続が可能なため、コネクテッドカー分野のサービス設計がやりやすく、高級車などを中心にした搭載から今後は大衆車への広がりが期待される。

地域別では北米や欧州を中心に拡大すると見込んでいる。中国は新車販売台数の増加に比例して、早ければ22年にも世界最大のコネクテッドカー需要地になると予測する。

また、テレマティクスに接続したトラックやバスなどの商用車普及台数は、35年に17年比11倍の7550万台と推定した。TSP(テレマティクス・サービス・プロバイダー)によるサービスが広がるとみている。商用車メーカーによる新車向けサービスは大型から中小型までテレマティクスの標準搭載を進める動きがあり、堅調に伸びる見込みだ。

日刊工業新聞社2020年5月1日

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