融資10兆円実行。みずほFG社長が力説するコロナ禍の姿勢
みずほフィナンシャルグループ(FG)は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う国内外の融資実行が6月中旬時点で10兆円に上ったことを明らかにした。融資申請は17兆円に膨らんだ。2008年のリーマン・ショック時の水準を大きく上回るという。10日までに取材に応じたみずほFGの坂井辰史社長は、「中小企業からの借り入れ相談は週1000件ほど。ペースがまったく落ちていない」と語った。
国内外の大企業向けは「相談件数が落ち着いてきた」と手当が一巡したとの認識を示した。大企業は一定期間・極度額内で何度も資金の借り入れ・返済ができるコミットメントライン(融資枠)などで、おおむね手元流動性を確保したようだ。
一方、中小企業の資金繰り相談は後を絶たない。坂井社長は「金利や担保の話を優先して融資を止めていたら状況はさらに悪化してしまう」としコロナ禍の今は、採算性を後回しに止血措置の融資を継続する考え。3月には新型コロナに抗じる企業向けの低利融資枠を設定し、5月にはこの追加枠を設けた。3月の第1号が3000億円、5月の第2号は7000億円で計1兆円の枠とした。
止血に加え、企業の継続と成長に向けた支援にも目を向ける。ポストコロナの成長投資に、借入期間が最長10年の低利融資枠を別途設けた。また、焦点が流動性からソルベンシー(支払い能力)に変わり、「資本増強が次の課題」(坂井社長)になるとみて、資本性資金の提供に力を注ぐ構えだ。弁済の順位が低く資本とみなされる劣後ローンなどを拡充していく。資本性資金については「民間では限界があり、政投銀や地域経済活性化支援機構(REVIC)との協調が有効だ」との見解を示した。
インタビュー/みずほFG社長・坂井辰史氏 資本性資金の提供、着実に
みずほFGの坂井社長に、コロナ禍にある足元での資金需要や中小企業への融資姿勢などを聞いた。(聞き手=編集委員・六笠友和)
―日銀調べで、5月末の貸出平均残高が過去最高を記録しました。 「海外の大企業はもう落ち着き、一部返済がある。国内大企業は4月に相談が急増したが、足元はスローになってきた。業種によるが、手元流動性をしっかり確保し備える体制が大体一巡してきた」
―まだまだ資金繰りに苦しむ中小企業の支援は。 「いずれ解消される一過性の問題で顧客の大事な事業基盤が毀損(きそん)されるのを防ぐ。この状況では、まず資金をお貸しし、1―3カ月たってから(事業や返済の)計画を作って話しましょうというスタンスだ。資本性資金の提供は元からの重点戦略であり、今からしっかりやっていく」
―08年のリーマン・ショックの際は、金融機関の融資姿勢が問題になりました。 「当時は金融機関が弱って実体経済にお金が回りにくく、不良債権となって金融機関に跳ね返るという負のスパイラルだった。今回は異なり、金融機関がしっかりと信用を供与している。顧客の資金繰りが付けば必ず回復するケースは多い。前回と同じ事態に陥らないようにするのが最大のポイントだ」