宇宙と地上、進むロボット技術の融合
開発者インタビューも
「宇宙は遠い存在ではない」東北大・吉田教授インタビュー
IEEEロボティクスオートメーション学会宇宙ロボット技術委員会で共同議長を務める吉田和哉東北大教授に、海外の宇宙ロボット開発について聞いた。
―宇宙ロボの用途は研究に限られます。海外での異分野連携の動向は。
「海外でも基本的に構造は同じだ。ロボットに限らず宇宙開発は国家プロジェクトに限られていた。だがこの構造を変えようと多くの人が挑戦している。米グーグルの民間月探査機開発レースでは賞金3000万ドルを目指して世界中から16チームが参加。我々も『HAKUTO』として参戦している。探査ロボの開発にも比して、打ち上げ資金の捻出が難しいテーマだ。宇宙開発をビジネスとして成立させるため各チームが奔走している」
―技術の特殊性も参入障壁でした。
「電子部品や部材などの民生品利用を進めてきた。これは大学の宇宙研究者が開拓してきた分野だ。一部の部品を除いて、大部分を民生技術で作れるようになった。この効果は超小型衛星で顕著だ。コストを下げ、開発期間を短縮した。以前は設計製造に10年かけて10年間運用していたが開発サイクルは数カ月、運用は1―2年。通常の電気製品と同じスピードで進化する」
―宇宙と地上の融合は進みますか。
「チャンスは格段に増えた。ビジネスでは超小型衛星を農作物の生育管理や漁業の高度化に活用するなど、異分野との挑戦が進んでいる。技術面では遠隔操縦技術は災害対応ロボ、分散制御はIoT(モノのインターネット)との相乗効果が高い。人類が月に到達したのは60年代だ。宇宙は遠い存在ではなく、普通の技術者が一生のうちに何度も挑戦できるテーマになりつつある」
(文=小寺貴之)
日刊工業新聞 2015年09月29日付「深層断面」記事を再編集