トヨタも導入。ウェブ面接は新卒採用の選考基準を変える

連載・withコロナ時代-就活に変 #01

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コロナを機にウェブ面接が一般化する見方が強まっている

新型コロナウイルス感染症が新卒採用のあり方を一変させようとしている。学生と直接接触する機会を減らすためにウェブ面接を導入する企業が相次いでおり、トヨタ自動車も導入する。さらにコロナ収束後も一般化するとの見方が強まっている。場所の制約を受けず学生との時間調整が容易なため、対面に比べて効率がいいからだ。地方学生や留学生を採用しやすい利点もある。

その中で、ウェブ面接は相手の雰囲気を掴みにくい弱点が指摘されており、それを補う手段としてエントリーシート(ES)などの事前情報の読み込みを今まで以上に重視する企業が出ている。人材業界からは「これまでの新卒採用は一般に事前情報で3割、面接による印象点で7割を決める配分で学生を評価してきた。ウェブ面接が一般化する今後はそのウェイトが逆転する」という推測も上がる。コロナ禍によって強制的に導入が進むウェブ面接が、採用選考のあり方を変えていく。(取材・葭本隆太)

内定まですべてウェブ面接

「今年の選考は最終面接まですべてウェブで行おう」―。人材紹介を手がけるプレシャスパートナーズ(東京都新宿区)の髙﨑誠司社長は2月14日、都内の本社オフィスで社員に宣言した。新型コロナが感染拡大の兆しを見せ始め、対面するリスクが認識される中で人材紹介業としていち早く選考の完全ウェブ化に挑み、その善し悪しを経験しようと考えた。地方採用の一部で2016年からウェブ面接を導入していたことも決断を後押しした。

5月28日までにウェブ選考で5人の学生に内定を出した。内定者には来社により会社の雰囲気を確認してもらった上で内定承諾について可否の判断を仰ぐ考えだ。髙﨑社長は「(選考に必要な情報のやり取りについては完全にウェブ化しても)特に不都合がなかった。会社の雰囲気を学生に感じてもらい、納得して内定を承諾してもらう目的で1―2度は会社で対面した方がよいとは思うが、(コロナ禍が落ち着いた)今後も選考はウェブを基本に考えている」と説明する。

■過半の学生が経験した

ウェブ面接の導入はコロナ禍によって大手を中心に一気に進んだ。人材業界の関係者からは「大手はほとんどの企業が導入している」や「(ウェブ面接の導入率は)大手で5割。中堅・中小で3割程度だろう」といった推測が聞かれる。就職・採用市場を研究するリクルートキャリア就職みらい研究所の調査によると56.9%の学生が4月中にウェブ面接を受けた。同研究所の増本全所長は「(4月7日の)緊急事態宣言を境にウェブ面接を導入する企業が増加した。ウェブ選考だけで内定を出すケースが出てきたのが今のトレンド」と説明する。

こうした中で、ウェブ面接は来期以降を含めた「今後の採用活動で一般化する」との見方が大勢を占める。場所の制約を受けず、面接官と学生の時間調整が容易という利点を企業が身をもって体感したからだ。ウイルスの蔓延により対面できなくなる潜在リスクが認識されたことも背景として指摘される。

ある人材紹介会社の幹部は「ウェブ選考の利点は従前から認識されていた。それでも導入が進まなかったのは他社が導入しない中で先行するのが不安だったから。横並び意識でしかない」と指摘する。その上で「コロナ禍を機にウェブ化が進むと、それに対応できていない企業が逆に選別される可能性がある」と予測する。また、マイナビ事業推進統括事業部に所属する林俊夫事業部長は「対面とウェブの両方を用意し、学生が選べる環境をつくっておくことがエチケットになる」と見通す。

■学生の不安解消が採用力に

場所の制約を受けずに時間調整もしやすいウェブ面接の利点は学生も享受できる。ただ、対面に比べて相手の雰囲気が掴みづらい点などについて不安の声も上がる。リクルートキャリア就職みらい研究所の調査では、実際に面接を体験した学生の33.6%が「自分の話が伝わるか」を不安な点として上げた。

ウェブ面接が一般化すると、こうした不安を解消するスキルが企業に求められる。18年から一部でウェブ面接を取り入れ、コロナ禍の今年は完全ウェブ化を実施したUSEN-NEXT HOLDINGSの住谷猛執行役員は「(ウェブ面接を導入した18年当初)学生は(画面越しで)熱意が伝わるかといった不安心理から緊張するケースが多かった。その緊張を和らげるため、面接官と接続する前に若手社員と接続してカジュアルなコミュニケーションを数分行うなど工夫を試みてきた。そのノウハウと実績があったので(完全ウェブ化に)移行できた」と胸を張る。

今までの採用方法は正しくなかった?

ウェブ面接の一般化は、新たなツールの広がりという影響に留まらず、採用選考のあり方を変えるという見方も出ている。パーソルキャリアとベネッセホールディングスの共同出資会社であるベネッセi-キャリア(東京都新宿区)の大竹航取締役は「新卒採用は一般に事前情報が3割、面接による印象点が7割という配分をベースに会社への適応度を評価して選考するスタイルが長く続いてきた。面接がウェブに切り替わり、相手の雰囲気が掴みにくい中で、企業は7割を決めることに恐れを抱き始めている。“with・afterコロナ”の新卒採用は(利点の大きい)ウェブ面接を残しつつ、事前情報を重視する考え方に特に大手は変わってきている。選考における事前情報と面接のウェイトが逆転する」と見通す。

ウェブ面接は事前情報が今まで以上に重要視される

そうした変化が起こりうる背景には、企業が抱える問題意識があるという。

「コロナ前の採用手法でも必ずしも成果が出ていたわけではなかった。(具体的には)採用選考時の評価と仕事の活躍度は相関が取れていないことが分かってきている。その中で大手を中心に(学生時代の授業への向き合い方や成績などを含めた)事前情報の方が活躍度と相関があるという見立てをし始めている。事前情報の重要性の高まりは面接の一発勝負ではなく、普段の努力の積み重ねを評価するため学生にとってもよいことだ。(コロナを機に)採用基準を大きく変える時期が来ている」。

また、マイナビの林事業部長は「(経済界では)ジョブ型採用(の推進)が騒がれており、大学側では学びを可視化しようという動きがある。(こうした動きやウェブ化の流れを踏まえると)学生が授業を通して得た成果などのエビデンスに基づき採用する動きは強くなっていくのではないか」と推察する。

■コロナを機に問われること

コロナ禍で完全ウェブ選考を実施した前出のプレシャスパートナーズの髙﨑社長は「ウェブ面接で学生の話の細かいニュアンスをくみ取り、深掘りした質問をするために(エントリーシートなどの事前情報を)今まで以上に読み込まなければならないと感じた。事前資料は判断の軸になっていた」と証言する。その上で実際に実施した選考方法については不安も吐露する。

「(事前資料を読み込んだとはいえ)対面の面接をせずに採用した人材が会社でどのように活躍してくれるのかの答えはまだ見ていない。そこには正直一抹の不安がある」(髙﨑社長)。

新卒採用のあり方として、事前情報の重視が企業にとって完全に正しいかはまだわからない。ただ、コロナ禍が採用選考のあり方を再考する契機になっているのは間違いない。

連載・withコロナ時代―就活に変(全5回)

ウェブ面接やウェブ合同説明会、スカウト型採用など新型コロナの感染拡大を機に就活に関わる多様なツールが注目を集めています。こうしたツールの利用拡大によって変わりゆく就職活動のあり方を追いました。

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COMMENT

葭本隆太
デジタルメディア局
ニュースイッチ編集長

ウェブ面接は「一般化する」との見方が強い一方、「最終面接まですべてウェブで」という考えには否定的な企業も少なくありません。背景には学生に納得して入社してもらうために会社の雰囲気を直接感じて欲しいという考えがあるようです。私も今まで当たり前に会社という場所で同僚と顔を合わせながら仕事をしてきたので「学生の雰囲気」や「会社の雰囲気」がわからないと不安という考えはよく理解できます。となると、テレワークが当たり前になり、同僚ともオンラインでのやり取りばかりになったら、最終面接を対面でやる意味はなくなるのでしょうか。

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