コロナ時代だからこそ求められる民泊の役割、地域との「つながり」で課題解決を

エアビー日本代表が語る

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オンライン体験の日本語版(エアビー公式サイトより)

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、各国政府が外出の禁止や自粛を打ち出したことにより、地球規模で人の移動が制限されてきた。その間、多くの企業が「今できることは何か」と知恵を絞り、工夫を凝らしている。

当社もビデオ通話によるオンライン体験の仲介を始めた。料理教室や音楽レッスン、仏僧との瞑想(めいそう)などメニューをそろえている。当社は民泊を通じて人と人を結びつけることを事業としている。それはオフラインでもオンラインでも変わらない。

日本における事業展開でも「つながり」を重視してきた。宿泊場所を提供する「ホスト」や宿泊先を探す「ゲスト」などとの「つながり」はもちろん、民泊文化を社会に根付かせようと社会との信頼の構築に努めてきた。2014年に日本法人を設立した当初は民泊の認知度がそれほど高くなかったため、一部には「他人ごと」と感じる人もいたかもしれない。現在では日本国内の宿泊可能物件数は約9万件にまで拡大した。

事業開始当初から法令順守を掲げてきたが、18年6月に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行され、景色が一変した。一時的に登録物件数は大幅に減ったものの、我々の民泊事業が社会に広く認知され、民泊への理解が格段に高まってきたのを肌で感じている。

新法によって明確な枠組みができたことで民泊コミュニティーが大きく育つ礎ができた。もちろん、年間営業日や自治体の条例における区域や期間の制限など議論の余地はまだある。だが、これらは日本の民泊コミュニティーの成熟度に合致しているとも言える。同時に、民泊が今以上に日本社会に必要とされれば、法のあり方も変わってくるのではないか。そのためにも社会との「つながり」を一層重視していきたい。

旅客引きつける「体験」

当社が今進めているのは地域との「つながり」の強化だ。インターネットでの情報発信にとどまらず、当社のサービスを知ってもらえるように各地でセミナーを積極的に開いている。前回も述べたが、民泊の醍醐味(だいごみ)は地域のありのままを体験できることだ。民泊のマッチングサービスはその手段にすぎない。

日本の地方には、祭や伝統工芸品など地域固有の観光資源が多く眠っている。観光立国を目指す日本にとって、そうした資源を掘り起こし、来るべき将来にコロナウイルスの感染拡大が落ち着いて、以前のように旅ができるようになる時に向けて、国内外のゲストに足を運んでもらえる仕掛けづくりは急務だ。地域の人とのふれあいや日本文化の体験を求める外国人を地方に呼び込めるし、地域活性化の一助にもなる。

例えば岡山県では、今まで外国人観光客が来なかった場所に物件ができたことが契機になり、地域に「おもてなし隊」ができた。ホストだけでなく、地域一丸となってゲストをもてなすのは日本特有のスタイルで、世界でも珍しい。特徴あるサービスとして旅行客を引きつける「売り」になるはずだ。

「イベントホームステイ」制度を活用する自治体も増えている。この制度は年数回の大型イベントの時だけ、住民が交流などを目的として自宅に観光客を有料で泊められる仕組みで、都道府県や市町村が実施を決めている。通常の民泊と異なり、手続きも簡易で、気軽に民泊ホスト体験ができるのが特徴だ。

もちろん当社の力だけでは限界があり、128社(20年5月現在)の企業と協力し、民泊の輪を広げている。その際に意識しているのは、日本が抱える社会課題に寄与するという視点だ。例えば空き家対策。誰も住まなくなった地方の実家の扱いに悩む例は少なくない。賃貸より気軽に貸し出せる仕組みがあれば、誰もが幸せになれるはずだ。

人と人を結ぶプラットフォームを提供し、多くの人を巻き込み、知恵を出し合いながら、社会課題の解決をお手伝いする。我々の使命はコロナと共生する世界でも変わらない。

【略歴】田邊泰之(たなべ・やすゆき)94年(平6)米リーハイ大卒。02年米ジョージタウン大学院経営学修士(MBA)修了。消費者向けマーケティング業務を経て、Huluの日本事業立ち上げに携わる。13年Airbnbシンガポール法人入社、14年日本法人代表取締役。大阪府出身、48歳。

日刊工業新聞2020年6月1日

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