川重が1300社の中から原石を見つける“イノベーション出島”

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東京駅前のエコワーキングスペースに活動拠点を移した

外部の人と徹底的に会う

川崎重工業は2018年5月にスタートアップベンチャーや大学などとの連携を強化するため、東京駅前のコワーキングスペースに活動拠点を移した。これまで接触した組織や個人の数は1300社・人以上となる。20年3月には社員向けビジネスアイデア創出制度をスタート。事業検証に専念できる環境を支援する考えで、事業創出を推し進める。一連の事業を手がけるイノベーション部の野田真部長に狙いを聞いた。(編集委員・嶋田歩)

―本社から東京駅前に活動拠点を移転した理由を教えて下さい。

「従来枠にとらわれず、我々自身が意識変革をしなければという思いだった。重工業会社は社内に豊富な設備を抱え、自前主義でやってきている。製品開発も長期間をかけて作る物が大半。目まぐるしい市場変化の中で生き残るには外部との連携が不可欠だ。本社の建物を出た“出島”で、外部の人々と徹底的に会おうと考えた」

―川重であれば外部企業の売り込みも多いと思いますが。

「最初はサプライヤーの人との区別がつきにくかった。最近では相手方の理解も進み、最初から連携を前提に話ができるようになった。1300社を超す相手から原石をどうやって見分けるか。これには面談回数を重ねるしかない。多数の相手と会うことで、こちらの目利きの腕も上がったと思う」

―その先はどうしますか。

「外部のいろいろな技術、発想、アイデアを探索して発掘し、当社と協業でビジネスになりそうなネタについては継続コンタクトを取る。コンセプト検証の上でトライアルやマネタイズ(収益化)につなげる」

―社員向けビジネスアイデア創出制度は外部連携がカギになるケースも多いです。

「意思決定が遅い、売り上げが小さい事業は除外、複数カンパニーにまたがる、アイデアの受け皿がないというのが従来の重工業会社のスタイルだ。イノベーション部では、失敗を恐れずスピーディーに事業化できる、小さく生んで大きく育てるといった仕組みづくりを目指している。当社は変化に果敢に挑戦する組織風土として“カワる、サキへ。”を掲げている。仮に最終的に事業化しなくても、事業化に挑戦したこと自体が人材育成に役立つはずだ」

【チェックポイント/企業体質変えられるか】

野田イノベーション部長は、29歳で川重に中途採用で入社した経歴を持つ。それだけに従来の重工業会社の対応にとらわれない新しい仕掛けや取り組みに前向きだ。モノのインターネット(IoT)や第5世代通信(5G)など、重工業界を取り巻く環境は急激に変化している。川重がそうした変化に合わせて従来の企業体質を変えることができるか。外部連携で新事業を生み出そうとするイノベーション部の真価が問われる。

日刊工業新聞2020年 5月 5日

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