価格競争にさらされる紳士服業界で差別化へ…「洋服の青山」が掲げる“印”
【“点”を“線”に】
青山商事は3月、運営する「洋服の青山」「ザ・スーツカンパニー」など887店が環境配慮を示す「エコマーク」の認定を取得した。ビジネスウエア業界では初の取得であり、店舗での認定数は過去最大だ。
「“点”となっているESG(環境・社会・企業統治)活動を“線”にするため」。ESGを担当する広報部の長谷部道丈部長はエコマーク取得の理由を語る。環境面で言うと、店舗が主体となって省エネルギー化を進めてきた。しかし「省エネ対策は社内で電気代の節約が評価されても、社外から評価されることがなかった。他の取り組みも社外評価に結びつきにくかった」(長谷部部長)と語る。
ESGは企業から発信しないと、社会から正当な評価を受けられない。個々の活動を結びつけて“線”にし、「社外評価にも意識を向ける必要性を感じていた」(同)という。そんな課題を感じていた2019年春、日本環境協会(東京都千代田区)によるエコマークの説明会に参加した。エコマークは温暖化対策や資源循環など、総合的な環境配慮が認定基準だ。商品の認定が多いが、店舗もエコマークを取得できると知った。「エコマークの認定を目指せば、活動に横串を通せる」(同)と考え、認証作業に入った。
【スーツ下取り】
エコマークの審査で評価されたのが、店頭でのスーツの下取りだ。同社は回収したスーツの一部を原料に毛布を作り、防災用の備蓄品にしている。広報部の田路哲也さんは「防災毛布なら、下取りに協力した来店者にも分かりやすい」と手応えを話す。これまでに石川県輪島市へ毛布を寄贈した。同市の紳士服チェーン店は「洋服の青山」しかなく、地域に還元できる。
【国際団体に加盟】
調達先の環境や人権保護を推進する国際団体「Sedex」(英ロンドン)への参加もエコマーク審査での高評価だった。アパレル業界では、途上国の縫製工場における過酷な労働が問題となっている。青山商事は国際基準で調達先にも配慮しようとSedexに加盟した。「当社は日本で一番、ビジネスウエアを売っている。取引先とも連携し、環境・社会に配慮した商品づくりを広めたい」(長谷部部長)と語る。
紳士服業界は価格競争にさらされてきた。青山商事は19年9月、極端な割引による価格訴求を廃止すると宣言した。変わって「ESGで消費者に選んでもらえる店舗を目指したい」と意気込む。エコマークは差別化の象徴となる。