電力・交通・人の流れのデータ統合プロジェクト、早大が描く将来像

  • 2
  • 2
早大の大隈講堂

早稲田大学スマート社会技術融合研究機構(ACROSS)は電力、交通、人の流れのデータ分析と予測を統合するプロジェクトを本格化した。電力と交通で別々に見ていたエネルギー消費や環境の時間・空間変化を、同時にとらえて最適化するシミュレーションを行う。宇都宮市と手がけていた試みを複数自治体へ拡大。同機構が連携する企業55社から本格的な協働先を募り、各地の都市計画を後押しする。

ACROSSの林泰弘機構長らは宇都宮市と、スマートメーター(通信機能付き電力量計)によるデータから、地域の太陽光発電余剰量の時間変化を250メートルメッシュの区画で分析し、可視化する技術を確立した。これに基づいて電気自動車(EV)の充電の場所やタイミングを最適化すれば、再生エネルギーが有効利用できる。また人流データを組み合わせると、ヒトの活動とエネルギー使用量の相関を明らかにできる。

拡大するプロジェクトはエネルギー、環境とMaaS(乗り物のサービス化)を組み合わせた「早稲田大学 E―MaaS構想」と名付けた。複数都市で実施し、各地域の特性や相互関係を考慮して、電力と交通の挙動シミュレーションをする技術を確立する。リアルタイムで取得・蓄積されるビッグデータ(大量データ)を、人工知能(AI)の機械学習によって挙動予測する技術も開発する。また、電気自動車(EV)を自家用車からバスや新型路面電車などの電動車両へ大型化する場合の、電力増大への対応もある。

将来は高齢者などに自家用車から公共交通へのシフトを促し、二酸化炭素(CO2)削減を図ると同時に、需要や渋滞に対応した“ダイナミックダイヤ”を実現したいとしている。

日刊工業新聞2020年5月19日

早大、卓越大学院プログラムの中身

出典:日刊工業新聞2019年3月7日

専門性に偏らず、独創力や社会全体の俯瞰(ふかん)力を持つ博士人材育成は、企業や海外機関などとの多様な組織連携で―。5年一貫の博士教育の文部科学省事業「卓越大学院プログラム」がスタートした。大学院改革の先導モデルとなる、2018年度の採択13大学15件から事例を紹介する。初回は私立大学で唯一の採択となった早稲田大学の電力・エネルギー。

「早稲田大学がハブになり、連携する大学全体の大学院システムを改革する新しい試み」。卓越大学院プログラムの初年度審査結果で、早大の「パワー・エネルギー・プロフェッショナル(PEP)育成プログラム」は、他を圧倒する連携機関の質と量でこんなコメントを得た。

年約20人のプログラム生は、早大のみならず計13国公私立大学の対象約150人からの選抜だ。電力、ガス、石油など参加企業合計の各業界シェアは50―95%。1教員が研究指導する伝統的な博士教育とは対極の布陣だ。

プログラムコーディネーターの林泰弘教授は「分散型エネルギーへのシフトや少子化が進む時代に、一つの横断的な大学院が必要だった。早大だけの問題ではなかった」とプランの背景を説明する。

旧帝大をはじめライバルの大学と、それぞれつながる全10電力会社などを巻き込めたのはなぜか。それは早大の中長期計画の中核事業に同プログラムを位置付け、築いてきた“資産”を惜しげもなく提供するからだ。例えば、エネルギー国際標準化の教育設備、50社超の産学協同事業体(コンソーシアム)、先進のeラーニングや教員研修のシステム、企業ニーズの高い人文社会科学系の科目群などだ。「産業界から『PEP出身の博士なら採用したい』といわれるようにならなくては」と林教授は強調する。

専用スペースも、早大が独自予算の産学連携で建設中の新研究開発センターに用意する。トップレベルの大学がオールジャパンのリーダーになる、大学改革の新たな切り口が提示された。(取材=編集委員・山本佳世子)

COMMENT

山本佳世子
科学技術部
論説委員兼編集委員

早大はこのテーマで、文科省の初年度の卓越大学院の採択を、私立大学唯一でもぎとっている。各地域を担当する全10電力会社などと連携した、電力・エネルギー分野の一大拠点構築を進める中で、実践的な博士教育もするという、高度の研究と教育が深く関連した活動だ。さらに環境・エネルギーで先進の自治体と複数、実証実験をするという展開に、興味津々だ。

関連する記事はこちら

特集