【新型コロナ】初の治療薬「レムデシビル」、過度な期待は禁物の理由
新型コロナウイルス感染症の治療法確立に向けた取り組みが前進した。厚生労働省が米ギリアド・サイエンシズが開発した抗ウイルス薬「レムデシビル」を新型コロナの治療薬として国内で初めて承認した。レムデシビルは重症患者に治療効果があるとされる。ただ審査期間の短い「特例承認」を適用しており、今後も有効性や安全性の検証が不可欠であることなど課題は残る。
特例承認は、すでに海外で使用が認められた医薬品を対象に、短い審査で日本国内での使用を許可する。米国食品医薬品局(FDA)が2日、レムデシビルの緊急時使用許可を出したことを受け、日本はその5日後の7日に特例承認した。
もっともFDAの緊急時使用許可は一時的な措置で、最適な投与期間や副作用などは臨床試験で検証中だ。日本はそれを基に特例承認を下しただけに、治療効果や安全性の情報が十分に得られていない懸念があり、東邦大学教授で日本感染症学会理事長の舘田一博氏は「使いながら効果と安全性を検証していく必要がある」と話す。
またギリアドによるレムデシビルの日本への供給量は明らかになっておらず、十分な数量を確保できるか不透明だ。
こうした状況下で新型コロナの克服にはレムデシビルへの過度な期待は避け、安全で効果的な治療法を同時並行で探し当てていく姿勢が引き続き欠かせない。国内では富士フイルムが抗インフルエンザ薬「アビガン」の承認を目指している。
日刊工業新聞2020年5月11日