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【新型コロナ】減産措置の鉄鋼業界、中国の再開でさらなる苦境も

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自動車メーカーなどの需要減少を受け、鉄鋼各社は減産措置をとっている。感染流行がいち早く収束した中国では鉄鋼生産が再開した。ただ、従来の過剰な生産能力は解決されていない。世界的には感染収束はほど遠い状況だが、中国の安値品で市況が悪化すれば、日本の業界は苦境に追い打ちをかけられかねない。

中国は世界の粗鋼生産量の半数以上を生産しており、国有の宝武鋼鉄集団(上海市)は2019年、生産量で世界首位に立った。国内企業の買収が大きく、長年トップに君臨した欧アルセロール・ミッタルを抜いた。

世界鉄鋼協会がまとめた3月の粗鋼生産量によると、中国は前年同月比1・7%減の約7900万トンで、5カ月ぶりに減った。新型コロナで打撃を受けたとはいえ、在庫の積み上げなどで大幅減にはならなかったようだ。

業界団体の中国鋼鉄工業協会は、政府の政策もあって業界の「再編が加速する」とする。根本的な生産能力過剰問題を解決する必要があるが、どこまで中国が本気に取り組むかが課題だという。日本の輸出先である東南アジアなどに安い鋼材が広がれば、市況が悪化する。日本勢は収益の圧迫を懸念する。

日本鉄鋼連盟の北野嘉久会長(JFEスチール社長)は中国の鋼材在庫を「引き続き注視していく」と警戒。日本の鉄鋼各社は車や建設関連の需要急減に伴い、複数の高炉で一時休止に踏み切った。

生産活動を再開した中国に対し、日本では事態収束のめどがたたず、世界的な需要回復にも時間がかかりそうだ。中国の過剰生産問題はやはり大きく「鉄鋼の需給バランス回復に向け、世界的な生産体制見直しや業界再編も進む可能性がある」(大和総研の神田慶司シニアエコノミスト)といった指摘もある。

日刊工業新聞2020年5月8日

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