「メンタルやばい!」生体情報から自分のストレスを測る技術続々
ストレスを多く抱える現代人の心身を改善する「メンタルヘルスケア」への関心が高まっている。既存の問診やストレスチェックは自覚症状に基づくため、心身の不調を客観的・科学的に評価することは難しい。このため多様な生体情報を取得し、体調の数値化やソリューションの提供に結びつける技術に注目が集まっている。健康経営の観点から企業内での採用が広がる。
「疲労が慢性化するとミスが多くなり、生産性にも影響する」と説明するのは、疲労科学研究所(大阪市淀川区)の倉恒邦比古社長。同社は大阪市立大学医学部の研究成果をもとに2005年設立。疲労とストレスを測定するシステムを開発した。小型の自律神経測定器からデータを取得し、疲労とストレスの度合いを数値化する。
大企業との連携にも積極的だ。疲労とストレスの評価・分析に独自のアルゴリズムを活用するコア技術の用途開発を進めており、生産現場やトラック運転手の安全管理向けにも販路拡大を狙う。今後は蓄積したデータを解析し、個人の疲労状態に合わせた対策の提案を充実させる。
疲労回復を促す睡眠の評価にも関心が寄せられる。スリープウェル(大阪市北区)は脳の活動を表す脳波を計測し、睡眠状態を高精度に評価する医療機器「スリープスコープ」を開発した。デバイスは手のひらサイズで簡便に装着でき、企業の健康診断での活用も期待される。
これまで5万件以上の健常者の睡眠データを蓄積してきた。これをもとに機器の利用者に、同じ年齢・性別と比較した場合の判定結果を示すことで「患者の安心材料になる」と吉田政樹社長は話す。不眠状態に応じて専門家から適切な指導を受け、症状の改善につなげられるという。睡眠は、身体・精神的な疲労回復の判断材料となる。現在、大手メーカーの工場などで従業員の健康管理に採用が進む。
滋賀大学発ベンチャーのイヴケア(大津市)は、髪の毛のホルモンを分析して中長期でのストレスの度合いがどれだけ変化したかを捉える。髪の毛は、生体情報を蓄積しながら伸びる特性を持つ。「主観的にストレスを認識しなくても、身体には負荷が大きくかかっている場合がある」と五十棲計社長は解説する。大学の研究成果を生かし、髪の毛からホルモンの濃度を分析。心理学的知見を組み合わせながら、メンタルの状態を判定できる。既存のストレスチェックと合わせることで、個人に適した改善策を見いだすことが可能になるという。
(取材=大阪・中野恵美子)<関連記事>
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