【新型コロナ】治療薬「アビガン」増産体制の構築進む
宇部興産は22日、新型コロナウイルス感染症の治療薬として期待される抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」の原料となる中間体の製造と供給を7月に始めると発表した。宇部ケミカル工場(山口県宇部市、写真)で、既存設備を活用する。デンカやカネカ、富士化学工業(富山県上市町)もアビガン原料の供給を増やし、国内で増産体制の構築が進む。
宇部興産が生産する中間体は、原薬の主骨格を成す重要な製品。同社は2009年にも中間体を製造・供給した実績がある。アビガンは富士フイルムの子会社が開発。富士フイルムのアビガン増産に対応するため緊急的に再生産を決めた。生産量は非公表。
富士フイルムは段階的にアビガンの生産能力を拡大する計画。1カ月当たりの生産量を7月に3月上旬に比べ約2・5倍の約10万人分、9月に同7倍の約30万人分に増やす。国内サプライチェーン各社の間で増産への協力が広がっている。
富士化学工業は4月から郷柿沢工場(富山県上市町)でアビガン原薬の生産を開始。今後、従業員の新規雇用や製造設備と検査機器の整備により増産する。カネカは7月から原薬の生産を始める。デンカは5月から原料のマロン酸ジエチルを生産する。
富士フイルムは「複数社に協力を要請しており、アビガン増産に向けて最適な原料調達体制を整える」(同社)としている。
日刊工業新聞2020年4月23日