【新型コロナ】大学にも広がる“自粛” 授業・研究はどうなる?
文部科学省の調査によると、新型コロナウイルス感染症対策で、全国の大学や高専の9割以上が新年度の授業開始を延期したり、オンライン講義を実施か検討中という。各地の主要国立大学も活動制限指針を厳しくして、学内への入構を制限する。緊急事態宣言は日本全体の高等教育機関の活動にも大きな影響を及ぼしている。
北海道大学では3月4日に事務職員が新型ウイルスに罹患(りかん)したことから、3月23日に「新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置。以後、学位記授与式、入学式をはじめとして多くの大学主催イベントを中止したほか、授業開始日の延期、学生の海外派遣プログラム・留学生受け入れプログラムの中止や延期、海外オフィスや東京オフィスの閉鎖(職員は自宅勤務)、不要不急の出張や旅行の自粛、職員への時差出勤制度の導入などの措置をとっている。
キャンパス内への立ち入りは特に禁じてはいないが、必要以外の構内利用は避けることとしている。
在学生には「特に指示がない限り、通学を控えてください。各学部・大学院における授業日程に伴い通学が必要な場合は、所属学部・学院などの指示に従い、感染予防と体調管理に注意した行動を心掛けてください」と訴える。
北大の広大なキャンパス内はいつもなら海外からの観光客も含め、非常に多くの人たちでにぎわっているはずだが、3月からほぼ連日、閑散とした光景が続いている。学外の人たちへの構内入場についても禁じてはいないものの訪れる人を見かけることはほとんどない。
東北大、課外活動を禁止に
東北大学は4月7日付で、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた「緊急時における東北大学行動指針(BCP)」を作成し、緊急事態宣言が全国に拡大された中、17日には一段高いレベル4に引き上げた。作成時はレベル2だった。行動指針は「0」が通常。制限の段階は「5(原則停止)」まであり、現在の「4」は「制限―大」という段階だ。
授業はオンライン授業のみ。学生の課外活動は全面禁止となっている。学内会議は、オンライン会議のみ。事務体制は、現在進行中の重要な事務を継続するために必要最小限の人数が交替で短時間出勤する体制とし、それ以外は原則在宅勤務になっている。研究活動については、中止することで大きな研究の損失を被ることになる実験など、一部に限っている状況。
東大、オンラインで授業
東京大学は4月7日、政府の緊急事態宣言と東京都の緊急事態措置を受け、6段階の活動制限指針を2番目に厳しい「レベル3(制限―大)」に引き上げた。
それ以前の「レベル2(制限―中)」では、必要最小限の研究室関係者は大学に立ち入れたが、より厳しくなった。キャンパスへの入構は、中止すると大きな損失を被る実験を行っている研究スタッフや、生物の世話など研究材料の維持のために入室するスタッフなどに限定した。ただ、医療関係者やコロナウイルス研究従事者は除いた。
また新入生が教養教育を受ける駒場キャンパス(東京都目黒区)も、感染拡大に応じて6段階の活動制限指針を2番目に厳しい「レッドB(制限―大)」に移行した。緊急事態宣言に基づく知事の外出自粛要請や学校施設使用停止要請などがあった場合に出される。当初は「ステージ・レッド」が最も厳しい設定だったが、本部の指針に対応させるためステージ・レッドを3段階に細分化した。ほぼすべての学生の登校を禁止し、授業はすべてオンライン。サークル活動や課外活動も禁止した。
東工大、教職員も在宅勤務東京工業大学は3月末に、社会状況に応じて4段階に区分し活動制限を明示する体制を整えた。具体的には学事スケジュール、授業方法、相談窓口の対応、学生の研究活動、教員らの研究活動だ。
東京都などを対象とした緊急事態宣言が出されてからは学生は登校禁止、教職員も原則、来学禁止で在宅勤務だ。研究室の“シャットダウン計画”に基づいて、研究室における研究活動も停止している。一方、研究機器や実験動物の維持・管理では、対応する教職員のみが最低限の頻度で認められている。
京大、活動制限を強化
京都大学は、京都府からの新型コロナウイルス感染症への対策強化に向けた施設の使用制限の要請を受けて対応を変更。4月17日付でガイドラインに定めた5段階の活動制限をレベル2からレベル3へ引き上げた。学内会議のオンライン化を推奨から原則へと強く推進。また、すでに学内の業務の見直しを進め在宅勤務を推奨してきたが、さらに運営上必要な業務を絞り、出勤と在宅勤務を交代で行う体制へ変更した。
研究活動についても制限を強めた。レベル2では、感染拡大の防止に最大限の配慮をした上でなるべく研究室での研究作業時間を削減し、可能な作業は自宅で行うよう促していた。レベル3では現在行っている実験や研究室の運営に必要最小限の人員のみ活動を認めるとした。加えて新たな実験の開始を原則禁止した。
山際寿一総長は同日付の文書で「ガイドラインは全学共通の対応のボトムラインを示すもの」と位置付けた。国の基本的対処方針である「最低7割、極力8割」の行動削減に貢献するため、各部局の状況に応じ、より高い制限を設けるよう呼び掛けている。
阪大、項目分け制限設定
大阪大学は大阪府による休業要請に伴い、4月14日から対応を強化。13日までと比べ、一部の活動の制限レベルを引き上げた。阪大は学内の活動を講義・授業と教員・研究活動、事務職、会議、学生の入校、課外活動の6項目に分け、それぞれで5段階の制限をかけている。
教員・研究活動のレベルは3から3・5に引き上げ。13日までは進行中の実験の継続を許可していたが、急を要し進行を止められない実験のみ認めるとした。また、新たな実験・研究作業を始めないよう指示した。学生の入校もレベル3から3・5に引き上げ。急を要する実験・研究を行う博士課程の大学院生のみの登校となった。
事務職はレベルを3から4へ引き上げ。3では事務機能維持の最小限の人員の出勤としていたが、災害や緊急事態対応と、新型コロナウイルス対策のための最小限の人員のみの出勤とした。会議はレベル4から4・5に引き上げ、定例会議はオンラインに、新型コロナウイルス対策の会議は10人未満の場合のみ対面を可とした。
名大、対面講義など停止
名古屋大学は学部学生に対し、9月までの前期で対面講義・講習は停止とし、遠隔授業に切り替えた。実験や実習など学内でしかできない授業については、人数を限定して実施する。
教員に対しては、在宅での研究活動を推奨しながら、感染防止措置を条件として学内での研究活動も認めている。
事務員などは部分的な在宅勤務や時差出勤を実施。10人以上の会議もオンライン化することとしている。
九大、学内施設の閉鎖進む
九大は緊急事態宣言の期間中は原則として関係者以外のキャンパスへの立ち入りを遠慮するよう掲示を出した
九州大学は「新型コロナウイルス感染拡大防止のための九州大学の行動指針」の5段階において4月13日時点は段階4。福岡県が緊急事態宣言の対象地域になったことも踏まえて対応している。教職員は原則として在宅勤務。授業については春学期の期間を5月7日―6月24日に変更した。
学内施設は大学病院と診療所を除き、4月15日までに予定を含み閉鎖や短縮営業など対応が進む。キャンパス内の寄宿舎にいる留学生を含む学生の生活維持に配慮しながらの取り組みだ。研究活動にも必要最低限を要請。また緊急事態宣言の期間中は原則として関係者以外のキャンパスへの立ち入りを遠慮するようお願いを出した。