地球規模の破滅的なパンデミック、ドローンの積極活用で社会変革を急げ

中国などがすでに先進的な取り組み

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中国Antwork社のドローンによる医療物資輸送

2019年秋に中国の武漢で発祥した新型コロナウイルスによる肺炎が、瞬く間に世界中に拡散し、感染者・死者は増加し続けている。人類はこうした感染症の「ステルスキラー」との戦いを余儀なくされてきた歴史がある。

18年5月、米ジョンズ・ホプキンス大学の公衆衛生大学院健康安全保障センターが『パンデミック病原体の諸特徴』と題する報告書を発表していた。報告書は「地球規模の破滅的な生物学的リスク」という新しい概念を提示して、ウイルス、細菌などの病原体が近い将来、人間社会に破滅的な影響を及ぼす可能性を予見し、警告していた。この警鐘に注意を払わなかった代償が今回の事態を生んでいる。

新型コロナという見えない敵の正体が解明されていない段階でできることは「密閉・密集・密接」を避けることであり、人と接しないということだ。ここでドローンやロボットが大活躍するシナリオが急速に登場してきた。

中国ではドローン配送会社のJD.comが、検疫され孤立した集落に物資を届けた。感染震源とされている武漢の近郊で深刻なウイルス被害を受けている浙江省では、杭州のスタートアップAntwork社がドローンで医療物資輸送を行っている。ドローンによる物資輸送は、輸送物と人員の接触を減らし医療物資の2次汚染を防ぎながら、通常の道路輸送に比べ効率を50%以上向上させている。

DJI社も農薬散布用大型ドローンを用いて深圳市で300万平方メートルに消毒剤を散布した。中国全土からの千を超える市や町の工場、住宅、病院、ゴミ処理場を中心に6億平方メートル以上のエリアを消毒しているという。

江西省では警官が「ドローン警務連帯」を組織して、ドローンを活用して歩行中の市民にマスク着用を呼びかけ、地上と空から立体的にウイルス対策を強化している。人が密集している場所では、ドローンに搭載したスピーカーから注意喚起し、警官の感染も防ぐという。

さらに、歩行中の体温をドローン搭載のサーモグラフィーで計測して、発熱のある人を発見し注意している。深圳のドローン企業MMCも、パトロール、除菌、熱感知用ドローンの配備を中国各地で進めており、100機以上のドローンを上海、広州などに配備した。取り組みと言えよう。

こうした先進的な取り組みが中国での感染者急拡大を防いでいるのかもしれない。中国以外でも、イランや韓国では、ドローンで市街地に消毒剤を散布している。スペインでもドローンを利用して、マドリード市街地を飛行して人々に外出を控えるよう呼びかけている。

長期戦の様相を呈している新型コロナ対策。感染の拡大を防ぐために、ドローンやロボットの活躍の場が着実に広がっている。CNNによると、米国ではシアトル近郊の病院で、聴診器搭載のロボットが入院した感染者の診察を行ったという。ロボットには聴診器のほか、カメラとディスプレーも搭載されており、医師や看護師が遠隔で患者とコミュニケーションをとり、健康状態を確認できる。

このようにパンデミックとの戦いにおいて、ドローンやロボットは人と連携して強力な武器になっている。社会システムのあり方を大きく変革する時期の到来とすべきであろう。

(文=先端ロボティクス財団理事長・野波健蔵)
【略歴】
野波健蔵(のなみ・けんぞう)東京都立大院修了。米航空宇宙局(NASA)研究員などを経て94年千葉大学教授。ドローン研究の第一人者で、18年には創業した自律制御システム研究所を東証マザーズに上場させた。70歳。

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