新型コロナ治療の切り札「心肺補助システム」、国内シェア7割テルモの最新技術

肺の機能、一時的に代替

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心肺補助システム「キャピオックスEBSエマセブ」

テルモが開発した「キャピオックスEBSエマセブ」が重症の肺炎患者の治療に活躍している。これは「心肺補助システム(ECMO)」で、一般的には人工心肺装置とも呼ばれている。肺の機能を一時的に代替し、身体機能の回復を助ける。新型コロナウイルスによる肺炎が広がる中、高度な技術が詰め込まれた同社の製品が患者の命を救っている。

【重症患者に使用】

「肺炎が重症化した23人の患者にECMOを使用したところ、12人が生還した」とテルモのカーディオバスキュラー事業マーケティング担当の山田真氏は治療成績例を引き合いに出す。同社の「キャピオックスEBSエマセブ」が、新型コロナ治療の“切り札”として注目を集めている。

国内には約1400台のECMOが普及しているとみられるが、同社の装置はシェアの7割を占める。その理由について、山田氏は「血液へのダメージを抑えた設計と、救急現場で迅速にセットアップできる機能が貢献している」という。

人工心肺装置は大別すると2種類ある。外科手術で心臓を一時的に止めなければならない状況で使用する大がかりな装置と、肺炎患者に呼吸補助などの目的で使用する装置の二つだ。後者の「心肺補助システム」が新型コロナによる肺炎に使用されている。

「ECMOを使えば全ての患者が治るわけではない」と山田氏は前置きした上で、有効性を次のように説明する。「肺の機能を一時的に休ませ、身体機能が回復するまでの時間稼ぎをする」。ただし新型コロナによる肺炎の場合、特効薬がまだないため患者の免疫力で回復を待つしかないという。

【運用体制に課題】

ECMOは人工肺や血液回路などの使い捨ての部品と装置本体から構成する。同製品は人工肺や血液回路など、患者の血液が直接触れる部分に「Xコーティング」と呼ばれる高分子化合物の特殊な加工を施している。血球成分が壊れにくく、溶血などのダメージや血栓が生じにくい。

血液にダメージを与えにくいコーティングを施した人工肺や血液回路

また、ECMOが必要になるのはかなり緊急性が高い状況だ。同製品は人工肺や血液回路などが一つのパッケージになっており「救急搬送された患者の前ですぐに組み立てられる」(同)という。

注目を集めるECMOだが、運用には課題もある。一人の患者に対し複数の医療スタッフが24時間体制で張り付く必要があり、医療従事者の負担が大きい。装置を操作する臨床工学技士は、脱血不良などのアクシデントが生じた場合、即座に対応できるよう経験や知識が要求される。東京医科歯科大学付属病院(東京都文京区)MEセンターの臨床工学技士・倉島直樹技師長は「専門教育を実施し装置を扱える技師を増やす必要がある」と指摘する。

テルモは装置の機能を向上し、問題の解決を目指す。同装置は血液中の酸素量やカリウム濃度を連続的にモニタリングするシステムを搭載し、患者の容体を管理しやすい。「弊社がこれまで培ってきた医療機器の技術が生きている」と山田氏は胸を張る。一人でも多くの命を救うために、同社は取り組み続けている。

日刊工業新聞2020年4月6日

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